横浜ゴム(株)は、9月26日、金沢大学理工研究域岩井研究室との共同研究により、氷上路面と摩擦中のゴム(走行中のタイヤをイメージ)の接地状態を可視化する評価技術を開発したと発表。
本技術を活用することで、吸水性に優れた新たな配合剤の発見や排水性の高いトレッドパターンの開発をより高精度に行うことが可能となり、氷上性能を飛躍的に高めた冬用タイヤの開発が期待できる。
自動車が氷上を走行する際にグリップ力が低下する主な原因は、氷表面に発生する水膜によりタイヤが路面に密着できなくなるとされている。
そのため、スタッドレスタイヤには、水膜を除去する吸水剤や排水性の高いトレッドパターンが採用されている。
しかし、これまでタイヤと路面の接地面を観察する際、路面とゴムの間に水が入り込んでいる部分とゴムが直接路面に接している部分(真実接触部)は同じように見えるため見分けることが困難で、真実接触の程度を正確に把握することはできていなかった。
そこで、このような課題の解決として同社と金沢大学では、高速度カメラを搭載した特殊試験機を開発することで、接地状態を可視化し、真実接触部を識別することに成功。
さらに、接触画像を数値化する解析技術の確立により、ゴムの吸水性や排水性を数値的に評価することにも成功した。
開発された特殊試験機は、氷あるいは氷を再現した透明で平滑な円盤とゴムサンプルを最大時速50kmで摩擦させ、その接地面のミクロレベルの画像を高速度カメラで1秒間に100万枚撮影することが可能。また、試験中の摩擦力を同時に測定する。
この試験機で撮影した画像は真実接触部のみを黒く映し出すことができ、例えば吸水剤あり(写真上)と吸水剤なし(写真下)のゴムでは前者の方が黒い部分の面積が広くなることがわかった。
さらに接触面積を摩擦力と関連づけるために新たに開発した解析技術で画像を数値化した結果、算出した数値はゴムの摩擦力と高い相関関係があることを明らかにした。
横浜ゴムは、2018年からスタートした3カ年の中期経営計画「グランドデザイン2020(GD2020)」のタイヤ消費財戦略において「ウィンタータイヤ戦略」を掲げ、「国内、欧州、ロシア・北欧向けウィンタータイヤで性能No.1」を目指している。
そういった中、同社では今回開発した技術を国内向けスタッドレスタイヤをはじめ、欧州向けウィンタータイヤ、オールシーズンタイヤなど冬用タイヤの開発に幅広く活用することで、「性能No.1」に向けた商品開発をさらに加速していく方針だ。