デンソーは12月10日、SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体を搭載した次期型昇圧用パワーモジュール(*1)の量産を開始したと発表した。なお同製品は、12月9日に発売されたトヨタ自動車の新型「MIRAI(ミライ)」に採用されている。
SiCは、従来のSi(シリコン)よりも、高温、高周波、高電圧環境での性能が優れる半導体材料。
デンソーは、SiCパワー半導体(ダイオード、トランジスタ)を車載用途に適応させるため、SiC技術「REVOSIC(レボシック/*2)」の研究開発に取り組み、2014年にオーディオ向けSiCトランジスタを実用化、2018年には車載用SiCダイオードが燃料電池バス(TOYOTA SORA)に採用された。
そして今回、車載用SiCトランジスタの新たな開発により、デンソーとして初めて、SiCトランジスタとSiCダイオードの双方が車載に搭載されることとなった。
トレンチゲート型採用のこのSiCトランジスタは、デンソー独自の構造や加工技術により、厳しい車載環境下で求められる高信頼性と高性能を両立。従来のSiパワー半導体搭載製品と比較して、SiCパワー半導体(ダイオード、トランジスタ)を搭載した次期型昇圧用パワーモジュールでは、体積が約30%、電力損失が約70%抑えられるため、昇圧用パワーモジュールの小型化と車両燃費の向上に貢献すると云う。
デンソーは、今後もSiC技術「REVOSIC」の研究開発を推進し、ハイブリッド車・電気自動車などの電動化車両への搭載を拡げ、低炭素社会の実現に向け、貢献していくとしている。
*1)昇圧用パワーモジュール:入力電圧より高い電圧を出力するために、搭載した複数のSiCパワー半導体を駆動する製品。
*2)REVOSIC:高品質と低損失を実現するデンソーのSiC技術の総称。革新的なSiC技術で社会に「変革」を促すことを目指しREVOSICと命名。業界最高品質(超低欠陥)を誇るウエハから高効率を実現したパワーモジュールまで総合的な技術開発を進めている。