デンソーは、ハンドル操作をモーターの力でアシストする、次期型の電動パワーステアリング・モーターコントロールユニット(EPS-MCU)「DDA2(デンソー・デュアル・アシスト第2世代)」を開発した。
開発品は、6月発売の「TOYOTA新型ハリアー」に搭載された。また今後、さまざまなカーメーカ―の自動車にも順次搭載される予定。
デンソーは、2015年に、自動運転時代を見据え、駆動回路とモーター巻線を2系統で持つEPS-MCU「DDA1(デンソー・デュアル・アシスト第1世代)」を、世界初開発。1つの機能を2つの系統で支えることで、万一片側の系統に問題が発生した際にも、もう一方の系統でアシストを継続し、スムーズなハンドル操作を維持することを可能にした。
新開発の「DDA2」では、2系統の駆動回路とモーター巻線を維持しながら、複数の部品の統合や構造の簡素化を実施。第1世代と比べて約1割小型化して低コスト化したほか、車両適合後に自動作成されるソフトウエアを車両工場で書き込む「ソフト部品化」に取り組むなどして、開発工数を削減した。
デンソーは今後も、高い性能、安全性を維持しながら製品を小型・低コスト化し、より多くの人に製品を届けること、製品の普及を加速させることで、世界中のすべての人にとって安全なクルマ社会の実現に取り組んでいくとしている。
[開発者コメント]
・シャシーコントロール機器技術部 門池祐太氏(ハードウエアの開発・設計)
「小型・低コスト」への挑戦、「つくりやすさ」の確保、「性能と品質」の維持、トレードオフにもなり得るこの3つの開発テーマすべてをいかに成立させるか。この難題に対し開発段階から製造チームと知恵を出し合い、つくる側の視点を織り込みながらチャレンジを重ね製品構造のコアを作り上げてきました。この製品はDDA1から培ってきた設計・製造技術の結晶と言えます。小型車からトラックまであらゆる車両へ安心安全な製品を普及させることを目指し、ラインアップの拡充とさらなる技術の進化を追求しクルマ社会に貢献し続けます。
・エレクトロニクス技術3部 溝下文貴氏(ソフトウエアの開発・設計)
ソフトウエアを車両工場で書き込む「ソフト部品化」は、これまでの仕事の流れや仕組みを大きく変える取り組みでした。社内の関係部署のみならず、お客さまや開発パートナーとの毎週の協議を経て、量産にこぎつけました。車種ごとに必要だったソフトウエア生成が必要なくなり、量産までの工程の簡素化、開発費の低コスト化、車両開発の短期化を実現しました。変化し続ける世の中で勝ち残れるよう「デンソーだから世に出せた」と言われるような製品の創出にこだわり、チャレンジし続けます。
・モータ製造部 森唯人氏(生産ライン立ち上げ)
製品の小型・低コスト化を目指し、複数の部品を統合するには、量産工程における高い加工技術が必要です。試作機の先行導入により、加工条件の早期確立に取り組み、設計チームや加工技術の知見者などと議論を重ねてきました。組織にとらわれず協力し合うことで、よりつくりやすい製品かつ良い生産ラインができたと感じています。生産準備にかかる時間の短縮、高品質かつ安定した供給体制の確立に向け、IoTを活用しながら進化したライン構築に取り組んでいきます。
・エレクトリック機器製造部 村田満理氏(生産ライン立ち上げ)
低コスト化を狙いに気密性を確保するシール部分をOリングから接着剤への変更することに挑戦しました。量産設備によるテストでは、複数の部署からの多くの関係者によって、設備改造・改善などのトライが繰り返され短期立ち上げにつなげたことが印象に残っています。また、私は入社後すぐに関わったプロジェクトでしたが、前向きな姿勢で協力してくれた仲間がいたからこそ成功できたと感じています。今回の経験を生かして将来的には次期型製品のライン立ち上げ業務のリーダーとして携わっていきたいです。
・エレクトロニクス製造部 小柳延之氏(生産ライン立上げ)
EPS製品の増産・多品種化・厳しい加工費目標に挑戦する中、自分自身の熱量を上げ、ECUの最速ライン開発に取り組みました。実現のために、要素技術開発として熱流体シミュレーションや高速搬送技術を取り入れた最速はんだ付装置を開発しました。また、生産開始前の品質保証チェックや治具段取りも自動化し、設備総合効率を大幅に向上させました。絶対やり切るという強い信念を持ち、事業部を超えたチームで数々の課題を乗り越え、目標を達成することができました。今後も泥臭く、諦めず、スマートに、常に熱量を上げながら世界一のECU製造工程構築に挑戦していきます。