自動車部品商社の大和産業は、「国際オートアフターマーケットEXPO2019(3月13日〜3月15日・東京ビッグサイト)」にて、自動運転車の車内でドライバーなどが車に話しかけることで、LED照明などの操作が可能な音声制御技術を公開した。
同社は、元々カーメーカーへのOEM納入、国内外のアフターマーケットへの保安部品の販売などを手掛ける商社。取引先には、曙ブレーキ工業やアイシン精機などのティア1・ティア2を中心に、国内外の大手が名を連ねる業界大手のひとつだ。
一方で、同社は技術特許を持つ防水小型LEDモジュールなどの自社開発・販売も手掛けており、LED照明関連製品に関しては独自のノウハウも持つ。今回展示したLED照明の音声制御技術は、将来普及が期待される自動運転車に大きなビジネスチャンスを見据えた同社が、自社が持つLEDに関する技術を活かし新しい事業展開を行う布石として展示したものだ。
ゴルフカートをベースにした展示デモカーの室内には、天井やパネル類、モニターなどに同社が製作したLED製品を搭載。
近未来カーをイメージしたハンドル中央のマイクにドライバーが話かけることで、搭載した音声認識ソフトが照明類の制御ユニットへ情報を伝達し、照明のオンオフなどを行う仕組みだ。
これは、つまり将来の自動運転車では、ドライバーは運転を行わないため、より室内の居住性や快適性が重要になるという考え方が元となり開発したものだ。
デモカーの各制御は、例えば、天井に配した室内灯の場合、ドライバーが「ルームライト」としゃべると点灯、「照明消して」と話すと消灯する。
また、「ドアオープン」としゃべると車体下部ドア付近に装備した足元灯が路面を照らし、「ドアクローズ」と話すと消える。
加えて、ヘッドライトやウインカー、ハザードランプなども、全て音声で制御が可能だ。
ほかにも、「お知らせして」と話すとメータパネルに文字情報が表示されたり、
「快適モード」を話すとシートのランバーサポート機能が稼働し、ドライバーの着座姿勢を長時間座っても疲れない正しい位置に変更。
ルームランプにはジェスチャー制御も採用し、手を近づけるだけでランプのオンオフが可能だ。
車の室内における様々な制御をドライバーが車に話しかけることで行う機能は、すでにメルセデス・ベンツが2018年に発売された新型AクラスなどにMBUXを採用。またBMWも、2019年3月から「BMWインテリジェント・パーソナル・アシスタント」の導入を発表している。
そして、それらは、いずれもAIを駆使し、ドライバーが話しかけると車のシステムが声で応答するトークバック方式を採用する。
一方、大和産業が展示した今回のシステムは、車側からの音声による応答はなく、ドライバーから話かけると制御が行われる、いわば「一方通行」のシステムだ。
車側からの応答の有無は利用者の好みが分かれるという見方もあるが、同社では今後よりニーズが高くなることが予想されるAIによるトークバック方式の開発も行うという。
また、既に実用化されているメルセデス・ベンツやBMWなどのシステムでは、行きたい場所の検索やルート設定、好きな音楽の選択など、同社が開発したシステムに比べ既に数多くの機能を有している。同社の技術が、今後これら既存システムとどのように肩を並べ、また差別化していくのかが気になるところだ。