大同特殊鋼は、中国市場でプラスチック成形品を作る際に使用する金型用の鋼材で偽装品が散見され、顧客より同社の鋼材を確実に入手したいと問い合わせが多く寄せられていることに対応するため、6月11日から、「金型用鋼材トレーサビリティシステム」を本格的に稼働させる。
同システムは、凸版印刷の統合ID認証プラットフォーム「ID-NEX」の技術を活用したものだと云う。
[背景]
金型用鋼材は大同から出荷された後、数段階の流通・販売店を経由して客の元へと届く。この流通段階で、客の求めるサイズに切断されるため、客側は大同の工場で発行する鋼材検査証明書(通称ミルシート)の内容と届いた現物とを比較するだけでは、真正品か偽装品か判断しにくいという課題があったと云う。
このような課題を解決するため、大同は同システムを中国市場で稼働、大同から最終の販売店までの取引履歴をトレースし、客側で確認できる仕組みを整えた。
客側は、これにより、入手した鋼材が、大同が販売・出荷したものか否かを即座に判断できるようになるとのことだ。
当面は、偽装品の流通量が多い大同のNAK80を対象に取引履歴のトレースを開始。6月11日の時点で、同システムを導入した販売店は6店となる(表1)。
大同は今後、対象鋼種を拡大するとともに、順次、同社の鋼材を取り扱う販売店へのシステム導入を進めていくとしている。
[表1.金型用鋼材トレーサビリティシステム導入販売店](6月11日現在)
<販売店名、所在地、導入時期>
– 大同模具鋼(広州)有限公司、広東省広州市、6月11日
– 厦门市天泰特殊钢有限公司【厦門市天泰特殊鋼有限公司】、福建省厦門市、6月11日
– 昆山兴丰昌金属材料有限公司【昆山興豊昌金属材料有限公司】、江蘇省昆山市、6月11日
– 东莞市合一五金制品有限公司【東莞市合一五金製品有限公司】、広東省東莞市、6月11日
– 重庆敏德兴模具材料科技有限公司【重慶敏德興模具材料科技有限公司】、重慶市、6月11日
– 无锡隆昌兴模具钢材有限公司【無錫隆昌興模具鋼材有限公司】、江蘇省無錫市、6月11日
– 佛山顶锋日嘉模具有限公司【佛山頂鋒日嘉模具有限公司】、広東省佛山市、7月1日予定
– 无锡顶锋日嘉金属制品有限公司【無錫頂鋒日嘉金属製品有限公司】、江蘇省無錫市、9月上旬予定
[特長]
同システムは、凸版印刷が大同向けにカスタマイズし、開発したもので、中国国内に設置したクラウドサーバー上で大同と流通・販売店各社間の取引履歴を管理する(図1)。
各販売店には購入量を超える販売証明書が発行できない仕組みが設けられ、大同材を販売店から購入した客は、販売店が発行する販売証明書(*1)の入手ができる(図2)。
客は、証明書に印刷されたQRコードをスマートフォン等で読み取り、取引履歴や成分情報等(*1)の確認ができる(図2、図3)。
また、販売証明書自体にもマイクロ文字や透かし、コピー防止印刷など、偽造防止技術を使用。
金型製作を外部委託しプラスチック成形品を製造する客は、素材の販売証明書の原本を、購入する金型と一緒に納品するよう金型製造会社に依頼することで、同システムが活用できるとのことだ。
*1:販売証明書は原則販売重量2kg以上の鋼材に発行される。
*2:QRコード読み取りは動作確認済の中国テンセント社製メッセージングアプリ「微信(WeChat)」を推奨。
*3:2018年6月11日現在システムを導入済みの販売店では、2018年4月18日大同出荷分より成分実績が表示される。2018年6月12日以降にシステムを導入する販売店では導入後に大同を出荷されたロットより成分実績が表示される。
■大同特殊鋼・トレーサビリティシステムのHP:https://www.daido.co.jp/products/tool/nak80/traceability/index.html
[問い合わせ先]
大同特殊鋼株式会社
工具鋼事業部企画開発部 井上、劉
TEL 03-5495-1271