三菱重工業は、ノルウェーに本拠を置く北欧最大のエネルギー企業であるエクイノール社(Equinor Energy AS)と、エネルギー関連事業におけるCO2排出を抑制する低炭素化技術の高度化に向けた協業で合意し、了解覚書(MOU)に調印したと、12月18日発表した。
両社は今回の非独占的連携により、石油・ガス事業におけるCO2排出量を削減する技術の開発・利用を推進する。特に、水素ならびにCCUS(CO2の回収・利用・貯留:Carbon dioxide Capture,Utilization and Storage)におけるバリューチェーンのさらなる発展に注力。三菱重工グループが戦略的に取り組むエナジートランジション(低環境負荷エネルギーへの転換)事業の強化につなげるとしている。
三菱重工グループは、これまでにCO2の回収・圧縮・再ガス化・加圧装置を含む、水素やCCUSのバリューチェーンに合わせたさまざまな技術を提供してきた。また、水素を利用できる最先端のガスタービンも開発している。現在は30%水素混焼を実現しているが、最終的には100%水素専焼を可能にするとしている。さらに、三菱重工の固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、電気と熱の両方を発生させることができる。三菱重工グループが誇る高い造船技術により、CCUSバリューチェーンで必要とされる液化CO2運搬シャトル船(LCO2船)と同じ構造を持つLPG(液化石油ガス)運搬船やLNG(液化天然ガス)運搬船の建造における専門知識を活かして、長距離CO2輸送のソリューションも提供している。
一方のエクイノール社は、北海に面した港湾都市スタバンゲル(Stavanger)を本拠に、石油・ガス事業を幅広く展開。同事業に関わる既存のバリューチェーンの脱炭素化に向けた、CCUSや水素などの事業機会を開拓し、再生可能エネルギーと石油・ガスとのバリューチェーン間の相乗効果を創出していくとしている。エクイノール社は、生産物からの排出量と生産に関わるエネルギー使用量に関して、2050年までに実質的なCO2排出フリーを達成して気候変動(温暖化)に影響を及ぼさない企業になることを目指している。これに伴い、現在のポートフォリオを、今後パリ協定の目標達成に向けた基盤となる再生可能エネルギーの構成比の拡大を目標に見直す計画。
三菱重工の欧州・中東・アフリカ総代表を務める神田誠執行役員は、今回のMOU調印について、次のように述べている。「経済のあらゆる分野で脱炭素化が急務であることは明らかであり、変革が進むエネルギー部門においては、イノベーションサイクルの短縮だけでなく、エネルギーバリューチェーンに関する全体的な視点も求められています。今回のMOUに反映されているようにテクノロジープロバイダーとエネルギー企業の緊密な連携によりエネルギーの効率的で信頼性の高い生産と利用を確実なものにするとともに直面する課題により適切に対処することが可能となります」。
また、エクイノール東京事務所の日本事業総代表であるKarsten Stoltenberg氏は「グローバルエネルギー開発企業であるエクイノール社にとって、エネルギーの未来を形作る明確なビジョンを持つ企業との協業は重要です。日本は、気候変動に対する意欲的なコミットメントを設定しており、水素と低炭素に関する技術開発を推進する複数の大企業の拠点となっています。三菱重工のような大手テクノロジープロバイダーとMOUを締結することで、今後も石油・ガス事業におけるCO2排出量の削減を進めるとともに、新たなバリューチェーンをいっそうスピーディーに開発していくことができます」と述べている。
三菱重工グループでは、今回のMOUを機に、エナジートランジション事業のさらなる強化・多様化を通じて、脱炭素社会の実現、社会に持続的な発展に貢献していくとしている。