神戸製鋼所100%子会社の米国・ミドレックス社(Midrex Technologies)は、世界最大の鉄鋼メーカーのアルセロール・ミッタル社(ArcelorMittal/本社:ルクセンブルグ)が進める、水素を活用した低炭素製鉄の研究・開発において、水素を活用した直接還元製鉄法の技術サプライヤーとして採用され、同社と共同開発契約を締結した。
また、その一環としてミドレックス社は、同社が保有する技術であるミドレックス法(※2)を活かし、アルセロール・ミッタル社が計画しているドイツ・ハンブルグ工場内に建設する、水素を活用した還元鉄(※1)製造実証プラントを設計する契約を併せて締結した。
この実証プラントでは、天然ガスを還元剤とする既設の直接還元鉄プラントの炉頂ガスに含まれる水素を回収し、水素還元を実証。年間約10万トンの還元鉄を生産する予定で、水素のみを還元剤とする直接還元鉄プラントとしては世界最大の規模になると云う。
ミドレックス法は、鉄鉱石(酸化鉄)を還元する際に天然ガスを使用し、高炉法に比べて製鉄工程でのCO2排出量を抑制する技術。それでも副産物として水と共に一定量のCO2が生成されることから、今回、プラントでは天然ガスの代わりに水素を使用することで、CO2の生成を無くし、副産物として水だけを発生させる。
【天然ガスベース】
Fe2O3+3CO→2Fe+3CO2
Fe2O3+3H2→2Fe+3H2O
【水素還元】
Fe2O3+3H2→2Fe+3H2O
今回の契約に際して、アルセロール・ミッタル社は、「当社は世界最大の直接還元製鉄法の技術サプライヤーであるミドレックス社と共に低炭素製鉄が中長期的には実現可能であることを証明したいと考えている。今回のハンブルクにて行われる実証試験はその第一歩である」と、コメント。
神戸製鋼所グループは、この取り組みを通じて、CO2を削減できる技術・製品・サービスの提供を行い、CO2排出削減に貢献していくとしている。
※1)還元鉄(DRI: Direct Reduced Iron):鉄鉱石を還元した鉄鋼原料。不純物の少ない清浄鉄源で、高級スクラップや銑鉄の代替品として、主に電気炉で鉄源として使用される。近年では欧州を中心に CO2削減の観点からの利用が注目されており、2018年に世界での還元鉄生産量は1億トンを超え、今後も増加すると予想される。
※2)ミドレックス法:世界の直接還元製鉄法の中で60%以上を占めるリーディングプロセス。同方式は、天然ガス(もしくは石炭由来のガス)を還元剤として、粉鉱石を加工したペレットをシャフト炉によって還元し、還元鉄を製造する。高炉法に比べ製鉄工程でのCO2排出量を抑制できることなどを特長とし、2019年には、商業生産開始から50周年を迎える。2018年の生産量は世界合計で約6,400万トンで、2,274万トン/年のCO₂排出削減効果を発揮している。
[実証プラント建設予定地]
– 拠点:ArcelorMittal Hamburg GmbH
– 設立:1970 年
– 主要な設備:直接還元鉄プラント、電炉、連続鋳造機、線材ミル
– 製品:線材
– 生産量(線材):約80万トン/年
– 社員数:約560名
– 既設 MIDREX 直接還元鉄プラント稼働開始:1971年
– 生産能力:60万トン/年
[ミドレックス社の概要]
– 商号:Midrex Technologies, Inc.
– 設立:1983年(買収)
– 所在地:米国 ノースカロライナ州 シャーロット市
– 代表者:社長・CEO Stephen Montague(スティーヴン・モンタギュー)
– 従業員:171人(2019年3月末時点)