ブリヂストンは1月28日、キリンとの共同研究により、「グアユール」由来の天然ゴム生産性向上に寄与する技術の開発に成功したと伝えた。同社は、天然ゴム資源の多様化によるタイヤ原材料のサステナブル化を目的として、グアユールの苗を安定的に増殖させる研究をキリンと共同で行っており、今回の研究開発の成果がグアユール農園における天然ゴム資源の生産性向上に大きく貢献するものとしている。
グアユールは米国南西部からメキシコ北部が原産の、降雨量の少ない乾燥地帯で栽培することが可能なキク科の低木(灌木)で、熱帯で栽培するパラゴムノキ由来のゴムに匹敵する成分を組織中に含む植物。ブリヂストンでは、タイヤ材料として実用化すべく、グアユール由来のゴムの生産性向上や物性改良に向けた研究開発を推進している。
今回、キリンとの共同研究により同一のグアユールを安定的に増殖させる技術が開発されたことで、今後は遺伝子情報から品種改良を行った優良種のグアユールの大量増殖が可能となり、天然ゴムの収量を安定させながら生産性の高いグアユールの栽培を加速させることが期待される。ブリヂストングループは、アメリカ合衆国アリゾナ州の自社グループの農園に植えた優良品種の苗木のフィールド評価を開始しており、今後、フィールド評価の結果を分析し、プロセスの最適化による物性改良やアプリケーション(用途)開発の成果と組み合わせることで、2020年代にグアユールゴムのタイヤ材料としての実用化を目指す。
同社では、グアユールゴムの実用化に向けてオープンイノベーションを推進している。今回、同社の持つグアユールに関する知見とキリンの植物大量増殖技術を融合させることで、より短期間で実用化に向けての重要な成果が得られたとしている。同社は、今後もオープンイノベーションを推進し、当社のコア技術と様々な企業・団体が持つ個々の領域の知見を融合させ、天然ゴム資源の多様化に向けた取組みを促進していきたいとのことだ。
2050年には全世界の人口が96億人にも達し、自動車の保有台数も24億台を超え、タイヤ生産に必要な材料量も増えていくと予想される。また、SDGsが示しているように、経済成長と環境負荷のデカップリングが求められている。現在タイヤ原材料となる天然ゴムは、「パラゴムノキ」から生産されており、産地が東南アジアに集中していることから、病害リスクや栽培面積の拡大に伴う熱帯雨林の減少が課題になっている。この課題を解決すべく、天然ゴム資源の多様化に向けた取組みとして、同社では砂漠のような乾燥地帯で栽培可能であり、熱帯地域の新たな森林伐採を低減することができるグアユールの研究開発を行っている。同社ではこれにより、天然ゴム資源の安定供給に貢献する技術を通じて、将来にかけて環境負荷低減と持続可能な事業を両立していきたいという。
同社は、「2050年にサステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社であり続ける」ことをビジョンとして掲げており、事業の成長と環境影響や資源消費の拡大を切り離す「デカップリング」への挑戦をさらに進めていくため、新たな環境中期目標「マイルストン2030」を設定した。イノベーションでソリューションを提供し、安心・安全な移動を支えると共に、再生可能資源、再生資源をより広く活用しながらサーキュラーエコノミー・CO2削減に貢献するなど、環境へのインパクトをさらに改善していきたいとしている。