ブリヂストンは12月22日、同社の石橋 秀一取締役代表執行役CEOが登壇。カーボンニュートラル社会の実現への道筋を示す「サステナビリティビジネス構想」を発表した。同社は今年を「第3の創業期(ブリヂストン3・0)」と位置づけており、先の7月の構想発表、そして11月に於ける進捗報告に続き、中期事業戦略の最後となったスピーチでは、2030年のその先を見据えた同社構想の概要を語った。
ブリヂストンは予てより「2050年を目処にサステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供する会社であり続けること」を掲げているが、石橋CEOはそれを前提に2020年が自社にとって〝1931年の創業〟〝1988年のファイヤストン買収を契機とした第2の創業〟に続く、まさしく第3の創業にあたる重要な年だと述べ、またこれにコロナ禍が加わったことで、過去の節目となった年を含めてもまさしく類を見ない程、過酷な1年になったと語った。
また今後は、ブリヂストンの創業者である石橋正二郎氏が制定し、これまで変わることなく受け継がれてきた「最高の品質で社会に貢献」していくことを改めて心に刻むと述べ、そのためにも常に「サステナビリティなソリューションカンパニー」であることを経営の中核に据えて、社会価値と顧客価値の創造を両立させて競争優位性を獲得。今後も社会や顧客と共に持続可能な社会実現を目指していくという。
一方、事業者としてのブリヂストンは、自らのコア事業であるタイヤ・ゴム事業に於いて、長寿命・省資源を実現する断トツ商品を開発するなど、絶えず原材料のリデュースに取り組んできた。それは顧客が商品を使用する際の価値を追求しなければならないソリューション事業でも変わらないとした。
具体的には、すり減ったタイヤのトレッド部分を貼り替えて再利用するリトレッド(Tire to Tire)などのリユースに事業に現れており、過去より積み上げてきたタイヤ・ゴム事業の強みを背景に、次世代の成長事業であるソリューション事業を拡大させていくこと。さらにこれをベースに各事業の価値を増幅・ スパイラルアップし続けることこそがブリヂストンの描く成長戦略であると説明した。
今後も2030年に向けて、使用済タイヤを原材料に還元(Tire to Rubber/Tire to Raw Material)し、資源循環を実現するリサイクル事業の構築を強力に推し進め、モノづくり時点での環境配慮を皮切りに、出来上がった製品を顧客が使用する段階、さらに使用後のリサイクルに至るまでを含めたバリューチェーン全域でCO2削減に貢献してていきたいと述べた。
加えて石橋CEOは、同ビジネスモデルは共創のイノベーションがなくては成り立たない。ソリューション事業でも、特にモビリティソリューションについては、自社独自の事業プラットフォームを通じて顧客や共創パートナーと繫がることで自らの構想を実現していくという。
これを前提にモノづくり領域、顧客の商品使用段階、そしてリサイクルを含めたバリューチェーン全体で、社会・顧客・ブリヂストンがWin-Win-Winとなる独自のサステナビリティビジネスモデルを構築していきたいと語った。
なおブリヂストンは「未来のすべての子どもたちが『安心』して暮らしていくために」という思いを込めて、顧客やビジネスパートナー、そして社会全体とひとつになって持続可能な社会の実現に誠実に取り組むことを宣言している。そして同環境宣言で掲げた活動を「中期目標(マイルストン2020)」に定めて取り組みを進めてきた。
結果、同マイルストンは2019年に前倒しで目標達成することができた。その成果は2005年対比の2019年実績でグローバルでの取水量を原単位ベースで40%削減、 資源生産性 (原材料使用量当たりの売上高) を33%向上、CO2排出量の原単位を34%の削減を実現しているとした。
同社は、これから事業成長と環境影響や資源消費の拡大を切り離す 「デカップリング」 への挑戦を推し進めていくために、次ステージとして「マイルストン2030」 を新たに設定。環境への貢献をさらに高めてく。
このマイルストン2030 で 「フォーカスターゲット」 になるのは「自然と共生する」べく水リスクの低減に取り組むこと。より具体的には水ストレス地域の生産拠点での活動で策定した「ウォータースチュワードシッププラン」 を実行していく。
また「資源を大切に使う」という意味に於いては、使用原材料のうちリサイクルされた再生資源と再生可能資源の割合を40%ににしていくことを目指す。 加えて「CO2を減らす」ために自社が排出するCO2の総量を50%削減。商品・サービスのライフサイクル・バリューチェーンを通じて、自社が排出するCO2の5倍以上の削減貢献を進めていくとした。
実際、自社の生産活動で排出するCO2は、既に2011年対比の2019年実績で14%削減を実現しており、2020年は更なる削減を見込んでいる。なお2050年を見据えた環境長期目標では完全な「カーボンニュートラル化」を目指している。
再生可能エネルギーの導入状況では、限度点で自社生産拠点に於ける太陽光発電の導入や再生可能エネルギーの調達を強化した結果、 EU域内で80%以上の使用率を達成。既に同地域では7つの工場で再生可能エネルギーによる電力使用が100%になっている。
最後に特に天然ゴムのサステナビリティについては、予てよりの課題であった中小規模農家とのエンゲージメント強化が進んでいる。またタイやインドネシアの小規模天然ゴム農家を対象に生産性向上を支援するワークショップを開催したり、主要な天然ゴム生産国では品質の高い天然ゴムの苗木を配布すると共に、自社農園向けに開発した生産性向上技術のトレーニングも実施中だ。
なかでもWWFとは、ミャンマーで持続可能な天然ゴムに関する取り組みを行っていて、電通国際情報サービスとはAIを活用した天然ゴム病害診断技術を共同開発。天然ゴムの生産性の向上に貢献していると述べていた。