ボッシュは3月8日、ドレスデンの新たな半導体製造工場において、シリコンウエハが完全自動製造プロセスを初めて通過するという、未来の半導体チップ工場に至るマイルストーンを達成したと発表した。
この半導体製造工場は、完全にデジタル化、高度にネットワーク化され、主に自動車用マイクロチップを製造する。同社は、この製造工場に約10億ユーロを投資しており、さらに新工場建設のためにドイツ政府、具体的にはドイツ連邦経済・エネルギー省から助成金も付与されている。
なお、ウエハ製造工場の正式な開所は2021年6月を予定している。
「未来のモビリティソリューション向け、そしてより安全な交通をつかさどるチップの製造を、まもなくドレスデンで開始します。未来のチップ工場の開所は、年内となる見込みです」と、ロバート・ボッシュGmbH取締役会メンバーのハラルド・クローガーは述べている。
また、ボッシュはすでに、シュトゥットガルト近郊のロイトリンゲンで半導体工場を稼働させている。
■プロトタイプの製造がすでに進行中
ボッシュは、2021年1月からドレスデンの製造プロセスで第一弾となるウエハの製造を開始。これをもとに、電気自動車やハイブリッド車に搭載するDC/DCコンバーターなどの用途で用いられるパワー半導体の製造を進める予定だ。
ウエハは、完全に自動化した約250の工程を経て6週間かけて製造するが、ここでは寸法が1µm(マイクロメートル)の数分の1という微細な構造をウエハ上に集積させる工程も含む。現在では、このマイクロチップのプロトタイプを電子部品に組み込んでテストできる段階にまで進んでいる。
ボッシュは、集積回路の初回量産を今年3月にスタートさせた。ウエハを半導体チップの完成品にするためには約700の処理工程が必要で、完成までに10週間以上が必要となる。
■300mmウエハ
ボッシュの新しいドレスデン工場の中核を担う技術は、1枚のウエハのチップ収量が3万1,000に上る300mmウエハ。従来タイプの150mmウエハや200mmウエハと比べて、300mmウエハはより大きなスケールメリットをもたらし、半導体製造における競争力の向上に貢献する。
さらに、ドレスデン工場の製造工程はすべて完全に自動化され、マシン間のデータもリアルタイムでやりとりされるため、チップの製造が非常に効率的に進む。「ボッシュの新しいウエハ製造工場は、自動化、デジタル化、そしてネットワーク化における基準を打ち立てています」と、クローガーは述べている。
■ウエハからチップへ
半導体は、IoT(モノのインターネット化)や未来のモビリティなど、ますます多くの用途に用いられるようになっている。ボッシュのドレスデン工場で扱うウエハは、直径が300mm、厚さはわずか60µmで、ヒトの毛髪の太さにも満たないサイズ。シリコンチップはわずか数平方ミリメートルというサイズだが、複雑な回路が集積されており、数百万もの電子機能が実装されることもある。