ボッシュは6月16日、オンラインで2022年「ボッシュ・グループ」の年次記者会見を開いた。この中で、クラウス・メーダ―社長は日本で新たに電動パワーステアリングの生産を開始するとともに、週休4日制も可能な柔軟に勤務体系を導入したことを明らかにした。(佃モビリティ総研・松下次男)
柔軟な勤務体系はボッシュの「スマート・ワーク」コンセプトをベースに実施しているもの。コロナ禍の中で100%在宅勤務を可能にしたのを踏まえ、今後も国・地域事情に合わせ、柔軟かつパーフォーマンスを重視した働き方を実現するとした。
一例として、遠隔地からのリモートワークや一定の条件下で海外からの勤務も可能とすることを視野に入れる。
さらに今年4月から新たに「ショートワーク正社員制度」を導入。育児や介護などによりフルタイムで働くことが難しい従業員や就学などの自己啓発のために短時間勤務を希望する社員が選択できる制度だ。
具体的には、週の所定労働時間を20時間以上、週3日以上とし、週3日勤務、すなわち週休4日制が選択できる。
電動パワーステアリングを日本で生産開始
メーダ―社長は2024年に横浜・都筑区に完成する新本社・新研究開発施設とスマート・ワークの組み合わせが、非常に変化の激しいビジネス環境下で「極めて重要な役割を果たす」と強調した。
2022年の事業活動では、埼玉県のむさし工場に「電動パワーステアリング製品」の最終組み立てラインを新たに立ち上げ、日本の自動車メーカーに納入する。従来は海外工場で組み立てていた。
今回、日本で組み立てるものは中型車をターゲットにした新世代製品で、冗長性により電気系統に故障が発生しても電動アシストを喪失させることなく継続できるとしている。
また、同製品はSAEレベル2以上の車両に対応することができ、自動化の進展に合わせフューエルオペレーションに対応した電動パワーステアリングへの需要が高まるとみている。
加えて、同ラインの立ち上げに当たってはコロナ禍に伴う水際対策でエキスパートの入国ができず、複合現実ゴーグルを用いて国外から遠隔で指揮を執り、問題を解決したことを紹介した。
週休4日制も可能な「ショートワーク正社員制度」を導入
さらに栃木工場では、2022年内に電動ブレーキブースター「iBooster」および小型車向けの派生製品「iBooster Compact」の量産開始の準備を進める。
このほか、埼玉県の寄居工場ではAI(人工知能)活用した外観検査を開始した。従来目視で行っていたコモンレール製品の外観検査をAIによる画像検査システムに切り替えることで、検査員による判定結果のばらつきを防ぎ、品質の向上に貢献できるという。
人員の負担を減らし、別の業務に充てることも可能だ。
メーダ―社長は、これに横浜市の新施設の建設着手を加えた4プロジェクトを日本市場への強いコミットメントを示す新規開発・生産プロジェクトの始動と位置付けた。
また、半導体不足では、ドイツのドレスデンとロイトリンゲンのウエハ製造工場の生産能力拡大とともに、マレーシアのペナンに半導体テストセンターの建設を計画していることを掲げて、対応を強化していることを示した。
さらに今後2025年にかけてロイトリンゲン工場に2億5千ユーロを追加投資し、新しい製造スペースとクリーンルーム施設を建設する予定だ。これにより、ボッシュはとくにMEMSセンサーとSiC(炭化ケイ素)パワー半導体の需要増大に対応する。
今後2年以内に250人以上のソフトウェア人員を採用
このほか、サプライヤーと調達の長期契約を結ぶほか、代替品調達を検討するなど多様な対応に取り組む考えも示した。一方で、2022年後半にかけて、多くのところが半導体不足について解消に向かうと見ていることを紹介し、深刻さは緩むとの見通しを示した。
また、ボッシュは中長期的にソフトウェア領域に注力していく方針を打ち出しており、2021年にはクロスドメイン・コンピューティング・ソリューション事業部を設立した。
こうした中で、グローバルでソフトウエアエンジニアの人員を年率10%増員していくとし、日本でもクロスドメイン・コンピューティング・ソリューション事業部だけで今後2年以内に250人以上のソフトウエアエンジニアを採用する計画を明らかにした。
ソフトウェア領域ではフォルクスワーゲンのソフトウェア開発子会社などの外部機関との提携も進めており、これらにより自動運転機能の開発を加速させる。
クリスチャン・メッカ―副社長は日本のボッシュ・ループの業績について、2021年は売上高が昨年比9・5%増の2950億円に達したと紹介。2022年も第1四半期は前年を上回っており、通期でも2021年より拡大することを見込んでいる。