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2020年8月4日【エネルギー】

ボッシュ、自動運転時の市街地検証成果を公表

坂上 賢治

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ボッシュ・ロゴ

パートナー企業と学術機関、MEC-View研究プロジェクトで得られた知見を発表

 

 独・ボッシュことロバート・ボッシュGmbH(本社:シュトゥットガルト・ゲーリンゲン、代表取締役社長:フォルクマル・デナー)は、MEC-Viewプロジェクトのコンソーシアムリーダーとして、パートナーのメルセデス・ベンツ、ノキア、オスラム、TomTom、IT Designers及びデュースブルク=エッセン大学、ウルム大学と協力。自動運転車両と市街などのインフラ連携で、安全で効率的なネットワーク環境を確立させることに成功した。(坂上 賢治)

 

 一般的に頻繁に道路利用者同士のやり取りが生じる市街地走行は、走行車両から見え難い歩行者、車両の前を通過する自転車、突然迫って来るバスなど、入り組んだ環境になっているゆえに突如、難しい判断が迫られることがある。

 

MEC-View研究プロジェクトを牽引したボッシュは、このような場面に於いて、自動運転車両に対して街灯が交通状況を提供していく。そんな役割を担わせることができるのではないかと考えた。

 

 

 そこで高度なモバイル通信技術を搭載した街灯に、ビデオセンサーやライダー(LiDAR=光検出・測距)センサーを組み込むことで、他の車両、自転車、歩行者といった障害物を迅速かつ確実に検知・伝達するインフラシステムの構築を試みた。

 

その結果、ドイツ経済エネルギー省(BMWi)から550万ユーロの資金援助を受けたMEC-View研究プロジェクトは、およそ3年以上の開発期間を経て、このコンセプトを実現させる準備を整えた。現在、プロジェクトを通して得られた知見を利用し技術をより洗練させるフェーズに移っている。今後プロジェクトで構築したインフラは時を空け、他の研究プロジェクトでも利用できるようになるとしている。

 

 ちなみに交通環境を眺める街灯の高さは最高で路上から6メートルにもなる。したがって交通量の多い交差点を上空から鳥のように正確に見通すことが可能だ。ボッシュでは、このような高さからの情報提供が自動運転車両にとって将来不可欠ななものとなると見ている。

 

もちろん自動運転車自体にも、カメラ、レーダー、LiDARセンサーなどで構成される360度の車載センサーシステムはがある。しかしトラックに遮られる歩行者、物陰から現れる乗用車、背後から接近して急な車線変更を試みる自転車などを認識するには必ずしも充分とは言えない。

 

 

 MEC-Viewプロジェクトを率いるボッシュのリューディガー・ウォルター・フェン氏(Rüdiger Walter Henn)は「車両には曲がり角や壁の向こうを見通す能力はないため、街灯にセンサーを組み込むことで車載センサーの視野を拡大することにしました。

 

そこで共に開発に関わるプロジェクトパートナーが、この目的に対応するハードウェアおよびソフトウェアを開発しました。このシステムでインフラのセンサーから取得した画像と信号を処理し、高解像度デジタルマップ(HDマップ)と組み合わせて無線で車両に伝送します。

 

さらに伝送されたこのデータを車載センサーの情報と統合し、関連するすべての道路利用者を含む精度の高い周辺画像を生成します。最先端のモバイル通信技術は、データを超低遅延で伝送することが可能です。

 

今回のMEC-Viewプロジェクトでは、このために最適化した5G通信規格の通信技術を採用し、リアルタイムのデータ伝送を基本としました。この目的を達成するためモバイルエッジコンピューティングサーバー(略称はMECサーバー)として知られる特殊なコンピュータが移動通信網に直接組み込まれます。

 

このサーバーが、街灯のセンサーのデータと車両のサラウンドセンサーのデータ、そして極めて高精度なデジタルマップを統合します。このようにして現在の交通状況に関して可能な限りの情報を含む周囲状況のモデルを生成し無線を介してそれを各車両で利用できるようにします。

 

将来的には、都市交通管制センターなどの施設にこのようなサーバーを導入すれば、メーカーに関係なくすべての車両、さらには他の道路利用者ともデータを共有できるようになります」と話す。

 

 一方、テスト環境の舞台となったウルム市では、2018年から実際の交通状況でプロジェクトパートナーによる自動運転のテスト車両とインフラのセンサー間のデータ送信のテストが行われきた。

 

具体的な例を挙げると同市のレーア地区に、非常に見通しが悪いことで知られる交差点がある。そこで、ここの街灯に最新鋭センサーを組み込み、同交差点で自動運転車の運転を支援する試みが行われた。

 

この交差点に側道からこ近づく車両は、巧みな運転操作を介して本道に合流する必要がある。このような場合、新開発技術を用いることで自動運転車がいち早く道路利用者を認識。状況に応じて適切な走行モードに切り抜けられるようになった。

 

このような技術の開発は都市交通の安全性を高め、近未来の道路交通を円滑化する。プロジェクト期間を経て同市に構築されたインフラ環境は引き続き利用され続け、今後の研究プロジェクトの完成に向けて、さらに活用・洗練されていく予定だ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。