NEXT MOBILITY

MENU

2022年9月21日【SDGs】

ボッシュ、独IAAで商用車の動力源に新たな選択肢を追加

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

 

来たる2035年には新型商用車の半分がEVかFCVになる

 

独ロバート・ボッシュGmbHは独国内がIAAたけなわの9月19日(独・中央時間)、2025年段階では、重量6トン以上のトラックの約8割が、未だディーゼルエンジンを搭載して走行しているとした予測を発表した。( 坂上 賢治 )

 

 

しかしその後は、パワートレインの多様化が一気に進み、2035年時期には新型商用車の半数がハイブリッドを含むバッテリーEV、または水素を動力源とする電気自動車になるとの見通しを示した。

 

独ハノーバーで開かれた「IAAトランスポーティション」のプレスカンファレンスに於いて、ロバート・ボッシュGmbH取締役会メンバー兼モビリティ ソリューションズ事業セクター統括部門長のマルクス・ハイン( Dr. Markus Heyn )氏は、「当社は、こうした流れに細やかに応えて行くソリューションを提供して行きます。

 

 

実際、我々は気候変動に左右されない貨物輸送の実現に向けて、パワートレイン製品のポートフォリオを多角的に拡大しています。

 

将来の重建設車両や農業機械では水素エンジンの搭載も選択肢に

 

具体的には、今も商用車分野で大きな役割を担うディーゼル・パワートレインに加え、ハイブリッドを含むバッテリーEVと燃料電池パワートレインも併せて提供しています。

 

またボッシュは現在、特に重建設車両や農業機械向けの代替パワートレインとして水素を直に使う水素エンジンも選択肢に取り入れています。

 

 

それは今日の気候変動の流れが、自動車を含む貨物輸送分野を、地政学的な見地でも、経済的な捉え方でも、モノ作りを含む工業インフラの進展速度という面でも、多様化せざる得ない環境に置いているという背景があるからです。

 

しかし今後10年間で、ボッシュのビジネスは代替パワートレインが大きな変化を生む成長因子になると見定めています。

 

世界中が不確実性に満ちている中で、我々ボッシュのモビリティソリューションズ事業セクターの今年の売上高は、現時点で為替調整後6%増となっています。

 

 

不確実な時代は特定技術に依存しない中立的なアプローチも有効

 

ボッシュの売上高の4分の1は、小型商用車から40トントラックに至るの商用車向けテクノロジーで占められています。またパワートレインだけに止まらず、運転支援システムとネットワークの進化も、我々の商用車分野に於ける事業成長の大きな柱となっています。

 

従って今の不確定な時代の流れの中に於いても、商用車産業の様々な事業展開や環境下に応じて複数の選択肢が用意して行く必要があります。

 

 

つまり不確実な時代にあって、特定の技術に依存しない技術中立的なアプローチは、実の所裏を返せば、商用車分野に限っては、着実な成長を目指すためには有効な指針でもあるのです。

 

当社では、今日に於いても3,400名ものエンジニアが未来のトラック向けパワートレインの開発に取り組んでいます。それは車両タイプとしての電動二輪車から大型の建設機械に至るまで、実に多彩です。

 

 

世界の自動車産業を支えるべく顧客の近くで生産体制を敷く

 

それは技術分野では、デジタル分野を支えるSiC(炭化ケイ素)チップから、メカトロニクスな駆動モジュール一式に至るまでの広域であり、これだけ多くの選択肢を提供している企業はボッシュの他に存在していません。

 

しかもその戦略は、今日に於いても着実に実を結びつつあるのです。ボッシュは、既に電動パワートレインについて複数のメーカーから30件に及ぶ大量受注を獲得しています。併せて燃料電池についても大きな計画を進めています。

 

ボッシュは、来たる2025年までに4万台以上のボッシュ製燃料電池システムを市場に投入する事を目標に据えています。これを支えるべく当社は、燃料電池スタック自体から自社で製造しており、米国アンダーソン、中国の無錫、ドイツのバンベルク工場と、いずれも世界各国の顧客の近くでの生産体制を敷いています。

 

 

また水素を必要とする動力源は、何も燃料電池に限らず、水素そのものを燃やす水素エンジンも必要としています。当社は、これらのパワートレインの制御ユニットと燃料噴射テクノロジー自体も自社で開発しており、既にインド当地では同分野の大規模プロジェクトも獲得しています。

 

 

自動車の研究開発に携わる従業員の半数はソフトウェアエンジニアに

 

なお我々は、そうしたハードウェアだけではなく、ソフトウェア分野でも実力を蓄えつつあります。モビリティソリューションズ事業セクターで、研究開発に携わる従業員の半数はソフトウェアエンジニアであり、とりわけ自動運転の開発には多くの人材を投入しています。

 

ボッシュではおよそ1,100名のエンジニアが自動運転に取り組んでおり、ソフトウェア、センサー、車載コンピューター、アクチュエーターをワンストップで提供出来る体制を敷いているのです。

 

 

今日、自動運転車に係る開発の加速化は、深刻なドライバー不足に乗じて大きく進展しており、この分野で商用車ほど、自動運転が経済的な見地を踏まえて理に適っている分野はないのです。

 

例えば欧州では、既に40万人のドライバーが不足していますから、当社は来たる2030年までに高速道路上のドライバーレス運転の実現をリアル達成目標として視野に据えています。

 

そのためにはそこから5年間を遡った2025年に、運行・制御センターからのデータと、車載センサーから抽出したデータを、リアルタイムで素早く処理できる車載コンピューターの存在が欠かせません。

 

 

商用車の世界は法的要件を含む様々な要因を飲み込む資質が求められる

 

そんな時代の中にあってボッシュとしては、将来の商用車のE/Eアーキテクチャ( ECUやセンサー、アクチュエータなどを繋いだクルマを含めた大きなシステム構造 )を大幅に強化し、未来に於けるソフトウェア基盤を提供していく事になります。

 

この自動運転に向けた道筋に於いて、運転支援システムで好調な業績を上げている現実績がボッシュの未来へ向けた大きな糧のひとつとなります。

 

その最たる例は、トラック向けのコーナーレーダーセンサーです。同市場は、今後数年間で40%の成長が見込まれている中、ボッシュはそれを上回る60%近い成長を見込んでいます。

 

ここでのボッシュの取り組みは、商用車による交通事故を防止するための法的要件を含む様々な要因を取り込み、発展し続けています。例えばターンアシスト機能は2024年からは欧州に於いて必須の機能になるからです。

 

 

世界規模で物流プラットフォームを監視していく役割を担いたい

 

また更にボッシュは商用車のボンネットの向こう側にも目を向けています。我々は米国を拠点とするクラウドプロバイダーのアマゾンウェブサービス(AWS)と協力し、自社の物流管理サービスだけでなくサードパーティのサービスも一元管理できるソフトウェアプラットフォームの開発に取り組んで来ました。

 

我々が将来的にこれらのソリューションを統合すれば、世界中の物流会社や貨物運送業者は現在利用しているドメスティックなソリューションを使用せずに、我々のデジタルサービスを簡単かつ便利に利用出来るようになります。

 

そのために今後、数週間以内にインドで大規模な物流管理プラットフォームを導入し、来年の初めには欧州と米国でそれを導入していく予定を立てています。

 

物流管理産業向けの同サービスは物流管理の監視を司るものとなり、将来的にこれを掌握したボッシュサービスセンターは目下、年間3~4万台のトラック・物資などを世界規模で監視する存在となります」と結んでいる。

 

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。