独ロバート・ボッシュGmbH(Robert Bosch GmbH)は中央ヨーロッパ時間の4月12日、2015年創業の自動運転ベンチャー、Five(ファイブ) を買収すると発表。日本国内に於いては1週間後にあたる4月18日に日本法人のボッシュ株式会社がこの買収概要を公式発表した。(坂上 賢治)
このファイブは、自動運転ソフトウエア〝Five AI〟を開発する英国籍のスタートアップ企業。創業間もないのだが既に英国政府が管轄する大型プロジェクトにも参画。英国内に於いて公道実証を重ねつつ鋭意、研究開発を進めている。
2021年1月からは、ADAS及び自律走行車市場向けの大規模なコンピューティングシュミレーション技術に強みを持っているイスラエル企業のコグナタ(Cognata) と協業する事を発表。
これを契機に自動レーンキーピングシステム(ALKS)向けのモジュール式クラウドベースのエンドツーエンド(クラウドとエッジを繋ぐ経路全体)開発に着手した。なおファイブ自体の事業規模は、目下140名の開発スタッフを抱えており、英国内に6つの事業拠点を構えている。
ボッシュとファイブの合意は、先の欧州地域での発表の通りで今年4月の初めに署名をもって完了している。またボッシュがファイブの株式を取得する事自体は、独占禁止当局による承認を経て既に成立したという。
また両社は、今回の買収に係る財務的な詳細を非公表とする事で合意したとしている。いずれにしてもこれにより、英国ケンブリッジに本社を置くファイブは、独ボッシュのクロスドメインコンピューティングソリューション事業部の傘下事業となる予定。
以上の合意についてロバート・ボッシュGmbH取締役会メンバー兼モビリティソリューションズ事業セクター統括部門長のマルクス・ハイン氏は「自動運転は、道路交通をより安全なものとします。
私たちがファイブに期待するのは、安全な自動運転向けソフトウェア開発の更なる推進と、お客様への欧州オリジナル技術の提供です」と昨今の技術や資源の〝地政学的な優位点を持つ事の大切さ〟に絡めて説明した。
一方、ファイブのスタン・ボーランド(Stan Boland)CEOは「自動運転技術の構築には、規模が重要です。ボッシュは運転支援技術における世界的リーダーであり、安全な自動運転システムを市場に投入するために不可欠なコア技術と膨大なデータレイクを保有しています。
今後、ファイブがヨーロッパで最強のSAEレベル4プレイヤーの一員となり、ボッシュの未来の成功の一翼を担うことを大変嬉しく思います」と話している。
同買収で両社は、互いのソフトウェアエンジニアリング環境のみならず、事業上の強みと不足している面を補完。加えて先に高解像度デジタルマップ分野の技術企業アトラテック(Atlatec GmbH) を買収したボッシュにとっては、自動運転ソフトウェア事業に於いて、自社内部開発に掛かる時間的制約を飛び越え、ヨーロッパ地域で一定の立ち位置を得ていくための足掛かりを掴んだと言えるだろう。