BMW傘下のシステムベンチャーBMWスタートアップガレージ( BMW Startup Garage )は7月19日、完成車両の工場内輸送を、ドライバーの手を煩わせずに自立走行させる〝無人輸送プロジェクト〟の初立ち上げを発表した。( 坂上 賢治 )
この完成車の自立移動工程を含む「工場内自動運転プロジェクト( AFW / Automatisiertes Fahren im Wer )」は、同月からBMW7シリーズのパイロット製造工程での実施が始まった。
このAFWプロジェクトをBMWが試みる理由は、完成車両が物流エリアを自律的に移動可能になる事で、安全かつ効率的な自動車の組み立て工程の時代をBMWが新たに切り拓く事になるからだ。
そのためにBMWグループは、施設内輸送の効率化に取り組む韓国のソウルロボティクス社( Seoul Robotics )と、スイスの自動運転ソフトウエア開発のエンボテック社( Embotech )と協力。まずは自社( BMW )のディンゴルフィング工場で、同技術を取り入れた2台の生産車を使った試験運用を消化した。
この試験運用についてBMWグループでプロジェクトマネージャーを担うサーシャ・アンドレ氏( Sascha Andree )は、「工場内での自動運転は、お客様向けの自動運転システムとは根本的に異なる技術を使っています。
最も大きな違いは、車両自体に同システムを進めるための特別なセンサーを搭載していない点があります。従って完成車工場から車両保管場所へ自立移動を可能にするための空間センサーは工場内部の当該ルート上に組み込んでいます。
これによりAFWのシステムは、自動的に通路空間を移動していく対象車両の位置を次々と特定。移動空間の随所にある障害物と完成車両との位置をセンサーで検出しつつ、クラウド通信を介して無人の車両を移動させるソリューションを実現させています。
従って最初のシステム構築時には、車両の組み立て工場から完成車の保管場所へ向かう経路空間をAFWに把握させるだけでシステム構築の下準備だけで済ませられます。この下準備により組立工場の生産ラインから出た完成車両は、保管庫に向けて無人走行するようになるのです。
ちなみにこのパイロットプロジェクトは慎重を期して今後、数か月に亘って実行されます。その後、最初はディンゴルフィング工場に於いて更なるモデル車両を追加した上で重ねて展開され、後にBMWの他の工場でも展開していく予定です」と話している。
加えて先のスイス・スイスのエンボテック社BMWのアレクサンダー・ドマヒディ( Alexander Domahidi )共同設立者兼CTOは、「韓国のソウルロボティクス社とスイスのエンボテック社という2つの若い新興企業と、大手OEMのBMWが組んだこのプロジェクトは、おそらくこの種の取り組みの中で世界初の試みだと認識しています。
そんな同プロジェクトは、BMWグループ傘下のベンチャー企業であるBMWスタートアップガレージの努力によって実現したものでもあります」と語った。
このエンボテック社の発言を受けてソウルロボティクス社のハンビン・リー( HanBin Lee )CEOは、「同システムの完成は、最初に当社の技術に着目したBMWスタートアップガレージの同システム構築に賭ける強い意欲があったからこそです。
それが無ければ、このソリューションをテストする事はおろか、評価する事すら出来なかったでしょう。しかもこれは今後も続々と続くサクセス ストーリーの1つに過ぎないのです」と結んでいる。