BMWグループのウッドラフ工場の全景図
「ローカル・フォー・ローカル」の原則に沿り、e-モビリティ強化を加速
独・BMW AG傘下のBMWグループ・カナダは10月16日(米オンタリオ州リッチモンドヒル発)、米国政府が示す「ローカル・フォー・ローカル」の原則に沿って、e-モビリティの強化を加速するべく地域サプライチェーンの強化に動いている。同社は、バッテリーセル等の蓄電池関連部品を車両生産の近隣で調達。一次材料のサプライチェーンを段階的に現地化していくことを目指す。
現在、BMWの搭載蓄電池モジュールの生産を担うウッドラフ工場(米ウィスコンシン州)が、スパータンバーグの自動車生産工場(サウス・カロライナ州)へ蓄電池ユニットを納めている。そうしたなかBMWは、ベルギーの非鉄金属企業Umicore(ユミコア)と、北米に於ける現地サプライチェーン確立のために手を結んだ。
そのUmicoreは、米に於けるBMWの電池セルサプライヤーAESC(現在、遠景科技集団/エンビジョングループ傘下、かつての日産・NEC合弁)の電池セル工場(初期に於ける年産30GWh規模/サウスカロライナ州フローレンス郡/2026年稼働予定)へ、自社の新工場(カナダ・オンタリオ州)から正極活電池材料を供給することになる。
世界の3大の主要地域を俯瞰し、バランスの取れた調達戦略を追求
ちなみにAESCの電池セル工場では、BMW eDrive第6世代のために開発された既存製品より20%エネルギー密度が高い次世代の円筒形リチウムイオン電池セルを生産する。また同拠点は2次原料を使い、100%再生可能エネルギー由来の電力を使用することから、一連のセル生産に掛かるCO2排出量を最大60%削減できる。
その上に、バッテリーセルとカソード原料の生産に使用される電力が再生可能エネルギーのみであることから、BMWにとってAESC工場は、北米地域のサプライ チェーン強化の鍵となる拠点だ。というのは今後、北米域内のバッテリーセルサプライヤーは、多くの主要材料をカナダから調達する予定であるからだ。
BMW AGの取締役会メンバーで購買・サプライヤーネットワークを担うヨアヒム・ポスト氏は、「当社グループは現在、世界の3つの主要地域を俯瞰し、バランスの取れた調達戦略を追求しています。
そうしたなかでカナダが、とても重要な役割を果たしてくれていることを嬉しく思います。我々にとってAESC並びにUmicoreは頼れるサプライチェーンパートナーです」と話す。
米国に於ける生産拠点拡張策のための投資額は17 億米ドル
またBMW AG経営委員会会長のオリバー・ツィプセ氏は、「既に2022年10月の段階で、我々は米国に於ける生産拠点拡張策のための17 億米ドルの投資を発表しました。
この中には、ウッドラフの新たな組み立てセンターの建設コスト7億ドルが含まれており、この新しい拠点は将来的に、ピュア電動のXモデルに対して高電圧バッテリーを供給することになります。
その規模は初期段階で約9万3000平方メートル。第6世代のバッテリーモジュールが生産される組立センターでは、約300人の新たな雇用も創出されることになります。
この新たなバッテリー製造が確立した暁(あかつき)には、エネルギー密度が20% 以上高められ、充電速度と充電範囲が最大30%向上することになります。またそれと同時にセル生産時のCO2排出量が最大60%削減されます。
更にもうひとつの利点があり、それは蓄電池セル製造を担うサプライヤーによって原材料となるリチウム、コバルト、ニッケルの一定割合で二次材料が使用されることになることです」と語っている。