カナダのソフトウェア企業、ブラックベリー(BlackBerry、本社・オンタリオ州)は10月8日、車載音響ソフトウェアのブラックベリーQNX音響管理プラットフォーム(AMP)をはじめとした車載向けソフトウェア戦略に関する記者説明会を東京都内で開いた。(佃モビリティ総研・松下次男)
QNX音響管理プラットフォームの最新バージョンを都内で公開
自動車向け総合音響ソリューションでは最新バージョン「AMP3・0」を9月からグローバルで提供開始。ブラックベリー・テクノロジー・ソリューションズ(BTS)のケイヴァン・カリミ・シニアバイスプレジデント兼共同代表は同ソフトウェアについて「単一のソリューションで車室内の音響が総体的に管理でき、大幅なコスト削減や開発工程短縮に役立つ」と述べるとともに、実用化が進むコネクテッドカーでのボイス交信などの音響管理にも効果が期待できるとの見解を示した。
最新の自動車には、複数の音響・音声信号処理システムが搭載されており、一部マイクやスピーカーが共有するケースも。このようなシステムでは予期せぬかたちで相互干渉することもあり、結果として不快なフィードバックやエコーが発生する。AMP3・0はこうした車室内の音響を管理し、サブシステムがシームレスに協調動作を行うように一元管理するアプローチにより、これらの問題を解決する。
BTSのケイヴァン・カリミ・シニアバイスプレジデント兼共同代表が会見
カリミ・シニアバイスプレジデント兼共同代表はこえまでの音響関連装置について「別々のシステムで構成されていた。それが一元管理できるため、大幅なコストダウンになる。また、車内の音質環境が非常にクリアーだ。自動車メーカーは音響関連システムの開発工程、期間が非常に短縮できる」と強調。システムの提案先としてはトータルで車両を設計、開発する自動車メーカーになるだろうとした。すでに独フォルクスワーゲン(VW)や米ゼネラルモーターズ(GM)などの車両に同ソフトが搭載され、実用化が進んでいる。
ブラックベリーはこうしたAMP3・0をはじめとした車載ソリューションなどの技術展示や取り組み事例を紹介する年次イベントを同日、都内のホテルで開催。AMP3・0を搭載したトヨタ「アルファード」や総合コクピットソリューションを搭載したコンセプトカーを会場に持ち込み、自動車メーカーやティア1メーカーへ採用を働きかけていた。
ブラックベリーはもともと携帯電話事業やスマートフォン向けソフトウェアを提供する通信機器メーカーとして事業を展開していた。だが、こうした事業が縮小する一方で、2010年に組み込み向けソフトウェアのQNX社を買収、車載向けソリューション分野に進出した。近年は、車載向けソフトウェアプラットフォームQNXをベースにした安全やセキュリティ事業が急速に拡大。さらに自動運転やコネクテッドカー向けソリューション提供にも力を入れている。
車内のノイズカットやコネクテッドにおけるクリアーなボイス交信の提供に期待
AMP3・0はこれらをベースに開発。マイクとスピーカー向けの自動チューニング・診断・サウンドデザインに対応した高度なツールセットであり、複数のアプリケーションプロセッサコアに柔軟に対応。さらに音声認識、通話、ハイレゾの音楽再生、車内の音声強調、アクティブノイズコントロール、車両内部の音声および車外の歩行者への警告音声に対応したサウンドデザイン/クリエーション、スピーカーのクロスオーバー、車内音質補正に利用されるオーディオ信号処理などの機能を持つ。
AMP3・0ソフトウェアは車載音響機能を組み合わせた統合的なパッケージとなっており、高音質のハンズフリー通話やマルチゾーンの音声認識体験を実現するほか、高品質の車内通信ソリューション、自動車の内外部騒音を低減しサウンドプロファイルを強化、調整する機能などで構成されている。会場のコンセプトカーでも車内外の騒音が瞬時にシャットダウンされ、静かな車室が再現されていた。
カリミし・シニアバイスプレジデント兼共同代表は、同ソフトウェアを単体で提供するほか、デンソーとも共同開発するブラックベリーQNX統合コクピットソリューション上でも機能するソフトウェアとして提案する考えを示唆した。さらに車内の統合的な音響体験を設計、管理することは、今後の自動運転技術やコネクテッドカーの進化にも不可欠とし、AMPソフトウェアの普及、拡大に自信を見せていた。