BASFは7月26日、ポルシェAGとカスタムセルズ社(Customcells)の合弁会社「セルフォース・グループ(Cellforce Group)」(以上全て、本社:ドイツ)と、次世代リチウムイオン電池のセル開発で提携したと発表した。
BASFは、セルフォース・グループが製造する次世代リチウムイオン電池に「高容量HED NCM(ニッケル・コバルト・マンガン三元系)正極材」を提供し、急速充電と高エネルギー密度を実現する高性能電池セルに貢献。2024年に稼働予定の電池生産工場は、当初年間100MWh以上の生産能力を備え、1,000台のモータースポーツ車両と高性能車に電源を供給していくと云う。
BASFはまた、サプライチェーンにおける最小のカーボンフットプリントを2022年に実現することを目指し、保有するフィンランドのハルヤヴァルタにある前駆体生産工場と、ドイツのシュヴァルツハイデにある正極材生産工場から、安定的に信頼性の高い原材料を調達し、持続可能性に優れた電池材料を提供することで、セルフォース・グループ電池工場で排出される廃棄物を、シュヴァルツハイデの電池リサイクルの試作工場で再生。リチウム、ニッケル、コバルト、マンガンを、湿式製錬プロセスでリサイクルし、正極材の製造プロセスで再利用していくとしている。
[各会社のコメント]
・BASF
取締役会メンバー Dr.マーカス=カミ―ト氏
「ポルシェおよびCellforce Groupと連携し、将来に向けた電気自動車用高性能電池を開発して、持続可能なモビリティという共通の目標に向けて協力することを楽しみにしています。BASFの正極材は、当社の強力な研究開発力を活用し、ポルシェ独自のニーズに合わせて製造されます。さらに、効率的な製造プロセス、再生可能エネルギーの比率の高さ、主要原料確保における垂直統合、バリューチェーンにおける効率的な輸送ルートにより、業界トップクラスの二酸化炭素排出量低減を実現します。電池をリサイクルすることで、貴重な材料を生産ループに残すことが可能になり、正極材のカーボンフットプリントを最大60%削減できると予想しています」。
BASFはシュヴァルツハイデの電池リサイクル工場で使用済み蓄電池のリサイクルも行う
・ポルシェAG
研究開発担当取締役 ミヒャエル=シュタイナー(Michael Steiner)氏
「自動車メーカーであるポルシェは、2030年までにバランスシート上でのカーボンニュートラルを目指しています。そのため、カーボンフットプリントの削減、クローズドループリサイクル、そしてサステナビリティがますます重要な要素となります。BASFとの提携は、あらゆる関係者にメリットをもたらします。ニッケルとコバルトのヨーロッパでの調達先、それに伴う供給の安定性、ドイツのシュヴァルツハイデからバーデン=ヴュルテンベルク州までの効率的な輸送ルート、これらすべてがBASFとの提携を決定するうえで重要な要因となりました。今回の検討内容で中心となったのがバッテリーセル、特に正極材です。BASFと協力して、環境に優しいセル技術を連続生産可能な状態にできることを、大変うれしく思います」。
ポルシェ研究開発担当取締役 ミヒャエル=シュタイナー(Michael Steiner)氏
・セルフォース・グループ
マネージングディレクター マーカス=グラーフ(Markus Gräf)氏
「正極材に関する深い専門知識を持つBASFは、セル開発の中心となる部分で私たちをサポートしてくれています。BASFの正極材は、最初から非常に高いサイクル安定性を示し、特に急速充電に優れています。これはまさにCellforce Groupが求めていた特性です。BASFは、正極材を次世代シリコン系負極の要件に適応させることにも、非常に力を入れています。また、生産の分野においても、BASFと共同で、各エリアで発生する廃棄物を回収し、クローズドループリサイクルを実現させるためのコンセプトを策定しました。これがコスト削減や、資源、環境の保全につながります」。
<参考>(YouTube)Cellforce Group GmbH: Joint Venture between Porsche and CUSTOMCELLS
■Customcells:https://www.customcells.org/