Amazon Web Services, Inc.(AWS)は12月1日、「AWS re:Invent」にて、Amazon Monitron、Amazon Lookout for Equipment、AWS Panorama Appliance、AWS Panoramaソフトウェア開発キット(SDK)、Amazon Lookout for Visionを発表した。
この5つの新しい機械学習サービスはいずれも、工業や製造業の顧客が生産工程に組み込むサービスで、業務効率、品質管理、セキュリティ、職場の安全性の向上に活用することができる。
これらのサービスは、高度な機械学習、センサー解析、コンピュータビジョンの機能を組み合わせ、工業や製造業の顧客が抱える共通の技術的な課題に対応し、現在利用可能なクラウドからエッジまでの産業向け機械学習サービスを提供する。
■Amazon MonitronとAmazon Lookout for Equipmentで機械学習を活用した予知保全が可能に
工業・製造業の企業が直面する大きな課題として、既存の設備の継続的なメンテナンスがある。従来、ほとんどの設備のメンテナンスは、機械が壊れた後や問題が起きてから対応するか、機械が壊れていないことを定期的に確認し予防的にメンテナンスするかのいずれかであった。問題が起きてから対応すると、結果として莫大なコストとダウンタイムが発生することが多く、一方、予防的なメンテナンスは費用がかかり、過剰メンテナンスになるか、あるいは頻繁にメンテナンスを行わない限りは予防ができない。そのため、機器のメンテナンスが必要な時を予測し対応する予知保全は、より確実なソリューションとなる。
しかし、予知保全を機能させるためには、企業では従来、熟練した技術者とデータサイエンティストが、複雑なソリューションをゼロから作る必要があった。中には、設備全体にセンサーを数多く設置し、多額の投資をしてきた企業も存在する。しかし、そうした企業でさえ、初歩的なデータ分析や単純なモデル化のアプローチをしていることが多く、費用が高いだけでなく、異常な状態を検知することに関しては、高度な機械学習モデルに比べると、非効率なことがしばしばあった。正確な予知保全を可能にするような機械学習モデルを構築し、精度を高めていく専門知識を持ったスタッフが、大半の企業で不足していた。
・Amazon Monitron
既存のセンサーネットワークを持たない顧客向け。異常を検知して産業機器のメンテナンスが必要な時を予測する。
・Amazon Lookout for Equipment
既存のセンサーがあり、機械学習モデルの構築を望まない顧客向け。モデルの構築、機器の異常検知および予測を行う。
■AWS Panoramaはコンピュータビジョンを元に、生産工程と職場の安全性の向上を実現
多くの工業・製造業の顧客が、施設や機器のライブ映像を画像認識することで、モニタリングや目視での外観検査を自動化し、リアルタイムで意思決定をしたいと望んでいる。たとえば、日常的に微粉砕機やレーザ工具などの高速プロセスをチェックして調整が必要かどうかを判断したり、現場や機材置き場などで、歩行者やフォークリフトが指定の作業ゾーン内で作業するなど法令遵守しているかどうかを確認したり、施設内でソーシャルディスタンスが取れているか、PPEが使われているかなど、作業員の安全を評価したりする必要がある。しかし、現在使われている一般的な監視方法は人手に頼っており、エラーが起こりやすく、規模の拡大が困難であった。
・AWS Panorama Appliance
新しいハードウェアアプライアンスで、コンピュータビジョンを、すでにデプロイ済みの既存のオンプレミス型カメラに追加することができる。AWS Panorama Applianceを自社のネットワークに接続して起動すれば、デバイスが自動的にカメラストリームを認識し、既存の産業用カメラとの交信を開始する。
・AWS Panoramaソフトウェア開発キット(SDK)
ハードウェアベンダーがエッジ側で有意義なコンピュータビジョンモデルを実行できる新たなカメラの構築を可能にするもの。AWS Panorama SDKを使用して構築されたカメラでは、高速で運転しているベルトコンベア上の破損したパーツを検知したり、機械が指定された作業区域以外のところにあることを検出したりといった用途にコンピュータビジョンモデルを使うことができる。
■Amazon Lookout for Visionは、画像や動画から自動的に素早く、そして正確に異常を検出できるサービスを低価格で提供
AWSの顧客がコンピュータビジョンをカメラにデプロイして使う用途の一つに、品質管理がある。工業・製造業の企業は、常に品質管理を維持するための努力が欠かせない。製造業だけをとってみても、エラーを見過ごしてしまったために生産ラインが停止した際に発生した追加費用と売上損失は、毎年何百万ドルにも及ぶ。
製造工程の外観検査は通常、人によって行われ、冗長で一貫性のない作業になりかねない。コンピュータビジョンは、一貫して欠陥を認識するのに必要な速度と正確性をもたらすが、実装するには複雑で、かつ機械学習モデルを構築、デプロイ、管理するデータサイエンティストチームが必要であった。このために、機械学習を搭載した外観異常検出システムは多くの企業にとって手の届かないものとなっている。
・Amazon Lookout for Vision
異常や欠陥を見つけるために、1時間あたり何千もの画像処理が可能な機械学習を使用した、高精度で低価格の異常検出ソリューション。機械部品の亀裂、パネルのへこみ、不規則な形、製品の色間違いなどの異常を、まとめてもしくはリアルタイムでAmazon Lookout for Visionに送信する。