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2021年2月17日【テクノロジー】

曙ブレーキ子会社、製品検査データの改ざん報告

NEXT MOBILITY編集部

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曙ブレーキ工業は2月16日、国内生産子会社が製造する自動車用ブレーキ製品の定期検査報告書の記載において一部不適切な行為が行われていた件について、その事実関係の調査結果と具体的な再発防止策を発表した。

曙ブレーキ工業・ロゴ

■複数の生産子会社で不適切な行為が判明
曙ブレーキ工業では、2019年11月に生産子会社の曙ブレーキ山形製造が製造する自動車用ブレーキパッドの一部で、完成車メーカーに提出する定期検査報告書の数値記載において不適切と思われる行為が行われているとの報告があり、同年12月より社内調査を開始。2020年2月には、調査対象を国内全生産拠点に拡大した。

 

その後、2020年3月上旬には、一部の完成車メーカーから、生産子会社の曙ブレーキ岩槻製造が製造するディスクブレーキの一部で、定期検査報告書に不審なデータが記載されていると指摘を受けている。このような状況から経営陣は、社外弁護士4名で構成する特別調査委員会の設置、調査を開始。2020年9月に調査結果の最終報告が行われた。

 

調査の結果、①自動車用ディスクブレーキ(曙ブレーキ岩槻製造㈱)、②自動車用パッド(曙ブレーキ山形製造㈱及び曙ブレーキ福島製造㈱)、③自動車用ドラムブレーキ(曙ブレーキ岩槻製造㈱及び曙ブレーキ山陽製造㈱)、④自動車用ライニング などにおいて、残存する検査データでは2001年1月が最も古い行為として確認されている。

不適切な行為としては、①検査データの修正(例:実測データのばらつきを、お客様管理値の中央値または従前の報告値に近い方向に修正)、②未実施検査データの記載(例:過去の検査データの流用等)、③要求されている検査サンプル数の省略(例:製品を2個使用して実施すべき検査を1個のみで実施)が確認された。

 

なお、定期報告データ総件数192,213件の内、不適切行為があった報告データは114,271件だが、その殆どが完成車メーカーとの合意に基づく管理値の範囲内であり、管理値と乖離がある報告データは4,931件であった。不適切行為があった報告データの内訳は以下の通り。

 

行為別及び生産子会社別内訳

 

また、対象製品の再評価結果、曙ブレーキ工業として製品の性能に問題はないと判断している。

 

 

■コンプライアンス強化と組織風土改革等の再発防止策
特別調査委員会から、組織体制の見直し・監査機能の強化、生産設備見直しとITシステム導入、教育研修によるコンプライアンスの強化と組織風土改革等の再発防止提言を受け、具体的計画を策定。取り組みを開始している。主な再発防止策は下記の通り。

 

(1)組織体制の見直し・監査機能の強化
①3線ディフェンス機能構築
従来、第1線である製造拠点内品質管理課が検査を実施し、完成車メーカーへの定期検査報告書を作成及び承認を行っていたが、定期検査報告書の承認は第2線である本社品質保証部門が行うことに変更した(2020年4月~)。また、第3線として内部監査室に製品監査機能を新たに追加し、品質保証部門の監査を行うこととした(2021 年1月~)。
②上記、3線ディフェンス機能構築のために、品質保証部門の組織改正及び内部監査室の人的強化を図った(2021年1月1日付)。
③社外取締役・社外監査役との内部通報に関する定期的情報交換の場を設けるとともに、重大な内部情報は直接、社外取締役・社外監査役に報告する仕組みを構築する(2021年3月~)。

(2)人の手が介在できないIT検査システムの導入
ITを活用し、検査データを自動的にデータベースへ集積、出力し、定期検査報告書を作成することによって、検査データ修正など人の手が介在できない、トレーサビリティも確保できるIT検査システムを導入する(2021年3月~)。

(3)検査内容・検査項目の見直し
検査技術、部品材料技術の向上等により、現在では合理的でない検査内容・検査項目については曙ブレーキ工業から完成車メーカーへ提案。協議の上、見直しを行う(2020年10月より協議開始)。

(4)品質教育・コンプライアンス教育の強化
①製造現場のオペレーターから班長、係長、幹部職までの階層別の品質教育及びコンプライアンス教育を見直し、体系化して実施する(2021年4月~)。
②開発部門や品質保証部門が関与し、品質分野の専門家の育成、統一した検査員の社内資格制度の仕組みを作る(2021年4月~)。

(5)風土改革・意識改革
「全社風土改革委員会」を設置(2021年3月1日付)し、経営トップがリーダーシップを取り組織風土と社員意識の向上、コンプライアンス、ガバナンス、内部統制システムの確保に取り組む。また、経営トップからの定期的なメッセージ発信他、社内コミュニケーションの強化、内部通報制度の実効性向上等の施策を行い、社員意識調査等による定期的モニタリングで施策効果を測る。

 

 

■内部牽制の欠如やコンプライアンス意識の甘さ
特別調査委員会報告書においても、その背景・原因として、内部牽制の欠如や品質・検査データに対するコンプライアンス意識の甘さがある等が指摘されている。

 

曙ブレーキ工業では、再発防止策を着実に実行し、信頼の回復に全力で取り組んでいくことが、現経営陣に課された責任であると考え、社長以下全執行役員の月額報酬の10%(3か月分)の減額を決定した。常勤監査役は、監査役報酬の自主返上の申し出に基づき、月額報酬の10%(3か月分)を返上する。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。