国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」)と住友理工は10月19日、産総研つくば北サイトに設置している車両実験用試走路(テストコース)の一部を改修し、新たに6種類の特殊路面を設置して使用を開始したと発表した。
自動車産業に押し寄せる大変革の波「CASE」において、新たなクルマづくりが求められる中、快適性や静粛性、操縦安定性などの向上を目的とした測定ニーズが生まれている。これらの要求に対応するため、実際の多様な走行路面を模擬し、車両の走行性能を詳細に評価できる設備への要望が高まっている。
両者は2020年10月、情報・人間工学領域ヒューマンモビリティ研究センターに「住友理工-産総研 先進高分子デバイス連携研究室」を設立し、運転時の生体の情報や状態を推定する研究を実施している。研究のさらなる進展を図るため、今回新たな特殊路面を設けたテストコースを整備。今後、センシングデバイスを実装した車両を用いて実際の走行を再現し、人間工学に基づいた乗り心地や快適性などの評価や、デバイス評価のための実験研究を行う。
本格的な実験開始を前に、10月18日にテストコース竣工式を挙行し、試走を行った。住友理工社長の清水は「次代を担う最先端の研究に対応した開発施設であると確信した。産総研の知能とタイアップし、これまでにない開発ができるのは大きな喜び。時代のニーズを迅速かつ的確につかみながら変化に柔軟に対応することで、新たな製品・サービスを生み出していく」と研究開発のさらなる加速へ意気込みを見せた。
産総研理事長の石村は「実際に乗車して初めて、路面ごとにさまざまな揺れや騒音、快不快があることを体感した。急速に進展するモビリティの変化に追随するだけでなく、その先を見越した新たな提案に結び付けてほしい」と期待を込めた。整備したテストコースを活用し、新たなモビリティ時代にふさわしい乗り心地や快適な車室空間の提案へとつなげていくとしている。
■テストコース改修の内容
テストコース(図1)の東西全3車線を改修し、それぞれ最外周の第3車線には合計6つの特殊路(車両評価のための特殊な路面)を設置した(図2)。これにより、直線部の走行がよりスムーズになるとともに、実際の路面を模擬した特殊路を活用して、乗り心地などに関して実際の走行状況に即した車両評価が行えるようになった。
図1 産総研テストコース(1981年11月完成)※写真上部が北側
特殊路は、①ロードノイズ路、②乗り心地路、③ベルジャン路、④波状路、⑤路面こもり、⑥ハーシュネス路の6種(長さ100~200メートル、幅3メートル)から構成される。路面に凹凸や異なるテクスチャー(素材や表面形状)の変化を設けることで、NVH(振動・騒音・ハーシュネス)を効果的に計測・評価することが可能になった。