NEXT MOBILITY

MENU

2022年2月10日【エネルギー】

愛知製鋼、高速・高減速な電動アクスルの技術実証に成功

NEXT MOBILITY編集部

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

愛知製鋼は2月10日、昨年1月に技術実証を行った3万4,000回転/分の小型軽量モータ(※1)に、新たに開発した小型高減速機を組み合わせ、省資源・小型軽量化に貢献する、高速回転・高減速の次世代電動アクスル(車軸)の技術実証に、世界で初めて成功したと発表した。

 

なお、同実証は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「部素材の代替・使用量削減に資する技術開発・実証事業」により結実した成果であると云う。

愛知製鋼・ロゴ

愛知製鋼では、電動車の本格普及に伴う資源不足への対応として、Nd(ネオジム)をはじめとする希土類や、電磁鋼板、銅などの使用量の大幅な低減に貢献する、電力消費率に優れた小型軽量な次世代電動アクスルの実用化に取り組んでいる。

 

この電動アクスルの開発にあたり、愛知製鋼は、長年培ってきた高い素材技術を融合。「鍛鋼一貫」技術を基に新開発した高強度・高精度なギヤ・シャフト内蔵の小型高減速機と、Dy(ジスプロシウム)フリーボンド磁石「マグファイン(※2)」を用いた高速回転の小型軽量モータを一体化した。

 

 

 

[今回開発の電動アクスルの特長]

 

1.小型軽量化

 

(1)小型高減速機

 

今回の高減速機による実証では、一般電動アクスル並みの効率を維持しつつ、減速比(※3)21.8(一般電動アクスル比2倍以上)を小型(タイトル写真:同一出力の一般電動アクスルと比較し、体積・重量をおよそ40%小型軽量化)で実現し、小型軽量モータから電動車の走行に必要なトルク(回転の強さ)1850N・mを獲得。

 

(2)高速回転モータ

 

「マグファイン」の特長(高磁力、高電気抵抗、ロータコアへの一体成形/※4)を活かし
つつ、東北大学との共同開発により磁石粉末を更に高性能化(※5)。3万4,000回転/分を保ちながら、一般モータ比でマイナス50%(愛知製鋼の従来の開発品比でマイナス10%)小型軽量化。

 

2.優れたリサイクル性

 

(1)磁石の資源問題に直結するレアアースについては、ボンド磁石の特性を活かし、Nd(ネオジム)を含んだ磁粉の再利用が可能(実証実験で磁粉回収率90%)。

 

(2)鍛造品(ギヤ・シャフト)は使用後、再度特殊鋼の原材料に再利用(資源循環)。

 

 

今後、愛知製鋼は、昨年10月発足の「愛知製鋼×東北大学 次世代電動アクスル用素材・プロセス共創研究所(※6)」を通して、技術の更なるブラッシュアップを図りつつ、課題対応を加速。革新的な電動アクスルの社会実装を目指すことで、電動車普及拡大に伴う資源・電力消費問題を解決し、カーボンニュートラル実現に貢献するとしている。

 

 

※1:(愛知製鋼の2021年1月7日付ニュースリリース)世界初の34,000回転で40%小型軽量化を実現するEV向け電動アクスルを開発 (PDF):https://www.aichi-steel.co.jp/news_item/20210107_news.pdf

※2:レアアースであるDy(ジスプロシウム)不使用のNd(ネオジム)系異方性磁石粉末に種々のプラスチックを混ぜて成形した磁石。電動工具や自動車用シートモータ等に採用。

※3:エンジンの回転数に対してタイヤの回転数を少なくすること。モータ回転数が高速になるほど減速比の大きい減速機が必要。

※4:モータロータ(電磁鋼板)に磁石コンパウンド(磁粉および樹脂)を充填しつつ、磁場をかけて成形する革新工法。

※5:(愛知製鋼の2021年2月9日付ニュースリリース)東北大学との共同開発によりDyフリーNd系異方性磁石粉末の高性能化に成功(PDF):https://www.aichi-steel.co.jp/news_item/20210209_release.pdf
※6:(愛知製鋼の2021年10月1日付ニュースリリース)東北大学と愛知製鋼による「組織的連携協力協定」の締結及び「共創研究所」の設立について:https://www.aichi-steel.co.jp/news_item/20211001_news.pdf

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。