愛知製鋼は2月10日、昨年1月に技術実証を行った3万4,000回転/分の小型軽量モータ(※1)に、新たに開発した小型高減速機を組み合わせ、省資源・小型軽量化に貢献する、高速回転・高減速の次世代電動アクスル(車軸)の技術実証に、世界で初めて成功したと発表した。
なお、同実証は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「部素材の代替・使用量削減に資する技術開発・実証事業」により結実した成果であると云う。
愛知製鋼では、電動車の本格普及に伴う資源不足への対応として、Nd(ネオジム)をはじめとする希土類や、電磁鋼板、銅などの使用量の大幅な低減に貢献する、電力消費率に優れた小型軽量な次世代電動アクスルの実用化に取り組んでいる。
この電動アクスルの開発にあたり、愛知製鋼は、長年培ってきた高い素材技術を融合。「鍛鋼一貫」技術を基に新開発した高強度・高精度なギヤ・シャフト内蔵の小型高減速機と、Dy(ジスプロシウム)フリーボンド磁石「マグファイン(※2)」を用いた高速回転の小型軽量モータを一体化した。
[今回開発の電動アクスルの特長]
1.小型軽量化
(1)小型高減速機
今回の高減速機による実証では、一般電動アクスル並みの効率を維持しつつ、減速比(※3)21.8(一般電動アクスル比2倍以上)を小型(タイトル写真:同一出力の一般電動アクスルと比較し、体積・重量をおよそ40%小型軽量化)で実現し、小型軽量モータから電動車の走行に必要なトルク(回転の強さ)1850N・mを獲得。
(2)高速回転モータ
「マグファイン」の特長(高磁力、高電気抵抗、ロータコアへの一体成形/※4)を活かし
つつ、東北大学との共同開発により磁石粉末を更に高性能化(※5)。3万4,000回転/分を保ちながら、一般モータ比でマイナス50%(愛知製鋼の従来の開発品比でマイナス10%)小型軽量化。
2.優れたリサイクル性
(1)磁石の資源問題に直結するレアアースについては、ボンド磁石の特性を活かし、Nd(ネオジム)を含んだ磁粉の再利用が可能(実証実験で磁粉回収率90%)。
(2)鍛造品(ギヤ・シャフト)は使用後、再度特殊鋼の原材料に再利用(資源循環)。
今後、愛知製鋼は、昨年10月発足の「愛知製鋼×東北大学 次世代電動アクスル用素材・プロセス共創研究所(※6)」を通して、技術の更なるブラッシュアップを図りつつ、課題対応を加速。革新的な電動アクスルの社会実装を目指すことで、電動車普及拡大に伴う資源・電力消費問題を解決し、カーボンニュートラル実現に貢献するとしている。
※1:(愛知製鋼の2021年1月7日付ニュースリリース)世界初の34,000回転で40%小型軽量化を実現するEV向け電動アクスルを開発 (PDF):https://www.aichi-steel.co.jp/news_item/20210107_news.pdf
※2:レアアースであるDy(ジスプロシウム)不使用のNd(ネオジム)系異方性磁石粉末に種々のプラスチックを混ぜて成形した磁石。電動工具や自動車用シートモータ等に採用。
※3:エンジンの回転数に対してタイヤの回転数を少なくすること。モータ回転数が高速になるほど減速比の大きい減速機が必要。
※4:モータロータ(電磁鋼板)に磁石コンパウンド(磁粉および樹脂)を充填しつつ、磁場をかけて成形する革新工法。
※5:(愛知製鋼の2021年2月9日付ニュースリリース)東北大学との共同開発によりDyフリーNd系異方性磁石粉末の高性能化に成功(PDF):https://www.aichi-steel.co.jp/news_item/20210209_release.pdf
※6:(愛知製鋼の2021年10月1日付ニュースリリース)東北大学と愛知製鋼による「組織的連携協力協定」の締結及び「共創研究所」の設立について:https://www.aichi-steel.co.jp/news_item/20211001_news.pdf