愛知製鋼は6月2日、水素社会の構築に貢献するステンレス鋼の開発を目的に、4.5億円を投じ、関工場(岐阜県関市)内に、高圧水素ガス環境における試験評価体制を確立したと発表した。
世界の燃料電池自動車(以下、FCV)に搭載される70MPa高圧水素ガスタンクの鋼材は、高圧水素ガスにさらされるため、優れた耐高圧水素ガス脆化特性を持つ、ステンレス鋼の適用が進んでいると云う。
トヨタグループの特殊鋼メーカーである愛知製鋼でも、他社に先駆けて高圧水素用ステンレス鋼を開発(※1)し、水素ステーションの高圧水素系機器や燃料電池自動車の高圧水素系部品に供給してきた。
しかし、今後のカーボンニュートラルに向けたFCV普及拡大のため、高圧水素ガスタンク鋼材のステンレス鋼には、さらなる高強度・高機能・省資源化が望まれていると云う。
愛知製鋼は、高圧水素系部品の設計には、大気環境と同様、高圧水素ガス環境における引張特性、疲労特性および疲労き裂進展特性の評価が必要であるとして、2019年、高圧水素ガス環境における軸荷重型の引張・疲労試験装置(※2)を導入し、各種試験評価を実施してきた。
そして今回、世界初となる(※3)90MPa高圧水素ガス環境における回転曲げ疲労試験装置(※4)を開発し、その試験評価を開始。この装置では、軸荷重型の引張・疲労試験装置と比較して、疲労試験時間を1/10以下に短縮することができると云う。
愛知製鋼は、今後、これら軸荷重型の引張・疲労試験装置と、回転曲げ疲労試験装置を併用することで、ステンレス鋼開発のスピードを飛躍的に向上。脱炭素に向けた水素社会の構築に貢献するステンレス鋼開発を強化し、それら製品の提供を通じて、持続可能な社会の実現に貢献していくとしている。
※1:AUS316L-H2,AUS305-H2
※2:タイトル画像(左)。高圧水素ガス環境試験に対応する軸荷重型の引張・疲労試験装置(2019年導入)
※3:愛知製鋼調べ。高圧水素ガス環境における回転曲げ疲労試験。
※4:タイトル画像(右)。高圧水素ガス環境試験に対応する世界初の回転曲げ疲労試験装置(今回導入)。