レゾナックが、去る2013年2月から龍野事業所(兵庫県たつの市)で量産を開始したリチウムイオン電池用バインダー「ポリゾール LBシリーズ」が、プライムアースEVエナジーのリチウムイオン電池の部材として初めて採用された。
ポリゾール LBシリーズが採用された同電池は、トヨタ自動車が今後販売する一部のハイブリッド自動車に搭載される。
ポリゾール LBシリーズ
そもそも近年、世界的なカーボンニュートラルの流れを受けて、ハイブリッド車や電気自動車などの電動車の普及が加速している。そしてこの電動車の普及に伴い、そうした車両に搭載すべきリチウムイオン電池には、より大電流で充放電できること、つまり、高い入出力特性が求められるようになってきた。
そうしたなかで今回、プライムアースEVエナジーに採用されたポリゾール LBは、高い電流要求に対してポリゾール LBは、レゾナックが保有する水系エマルジョン( 合成樹脂の粒子が水中に均一に分散している液体 )製品群のうち、リチウムイオン電池の入出力特性を最も高めるもので、大電流での充放電などに寄与する。
より具体的にポリゾール LBは、高温(60℃)保存後の充放電時の容量維持および、低温下(-20℃)での放電容量でSBRなどと比較して10%程度の改善が見られるなど、温度特性に優れている。また分散性が高く、少量の添加で高い結着性を持つことや負極の集電板である銅との密着性を1.5倍向上させることから、LIBの内部抵抗の低減を可能にする。
加えてリチウムイオンが出入りする正極・負極活物質(電気をためる物質)や、その他の補助添加剤、集電板を結着させる接着剤の役割を持つものでもあり、今回もリチウムイオン電池の負極に使用された場合、活物質間や活物質と集電箔間を接続することで負極の構造を維持できる特性がある。
負極の模式図
また他社のバインダー材料と比べて優れた低抵抗性能、温度特性、負極集電箔との高密着性などの特長を持ち、リチウムイオン電池の高入出力特性化、長寿命化、高容量化に貢献する。
つまり電気抵抗が低減するだけではなく、大きな電流を通せるようになるため、大電流での充放電が可能となるのだ。従って今回のポリゾール LBの採用決定は、レゾナックが〝これまでに培ってきたポリマー設計〟電池評価技術を活かした〝バインダーの組成・粒子構造の最適化技術〟などが正しく評価されて採用に至ったと謳っている。
なおレゾナックは、バインダーに加え、負極材、正負極用導電助剤「VGCF-H」、アルミラミネートフィルム「SPALF」など、リチウムイオン電池に関する様々な製品を保有しており、これらを組み合わせたソリューションの提案が可能という。
従って自社は今後も、リチウムイオン電池用の製品を筆頭に、環境に配慮した製品を提供し、カーボンニュートラルへの貢献を含めた持続可能な社会の発展に貢献していくと話している。
Resonac(レゾナック)グループについて
レゾナックグループは、半導体・電子材料、モビリティ、イノベーション材料、ケミカル等を展開し、川中から川下まで幅広い素材・先端材料テクノロジーを持つ化学会社。
2023年1月に昭和電工グループと昭和電工マテリアルズグループ(旧日立化成グループ)が統合し、新たなスタートを切った。新社名の「Resonac」は、英語の「RESONATE:共鳴する・響き渡る」と、Chemistryの「C」を組み合せて生まれた。
レゾナックは「共創型化学会社」として、共創を通じて持続的な成長と企業価値の向上を目指している。2023年度の売上高は約1兆3千億円、うち海外売上高が53%を占め、世界22の国や地域にある製造・販売拠点でグローバルに事業を展開している(2024年2月時点)。