ひろしま自動車産学官連携推進会議(以下「ひろ自連」)は6月25日、広島県内自動車関連産業の発展に向けた産学官連携活動の昨年度実績として、2020年度「ひろしま自動車産学官連携推進会議」の活動状況を発表した。
ひろ自連とは、広島地域のものづくり産業発展への強い希望と情熱を持ち、産業発展につながるイノベーションのてこになることを目指して、2015年6月に発足した産学官連携推進団体。自動車の独創的技術と文化の聖地を目指して、自動車産業を中心に、広島ならではの産学官連携モデルをつくり、将来に向けてのリードモデルとして、全国や他産業に波及させたいという志を持つ。
そして、発足から6年が経ち、取り巻く環境の大きな変化に対応するために、新たな産学官連携活動の目的を「広島の基幹産業である自動車産業を通じて、学び、働き、いつまでもこの広島で暮らしたいと思えるサステイナブルな広島を実現する」 と設定し、その目的を達成するための目標を、
①クルマづくりの価値創造
クルマのライフサイクル全体でカーボンニュートラルへの取組みにより、他の地域に先駆けてサステイナブルな経済成長を一番に実現する
②クルマ利用の価値創造
運転の楽しさやクルマ利用における安心・安全・健康コミュニティへの取組みにより、他の地域に先駆けて元気に暮らせる地域を一番に実現する
③イノベーション人財の創造
課題解決を担う人財が育ち定着する取組みにより、他の地域に先駆けてイノベーティブな若者定着を一番に実現する、
と3領域で設定。それらを踏まえ、2020年度の主な活動の中でも、カーボンニュートラルに貢献する成果、デジタルものづくりで地域経済成長に貢献する成果及びイノベーション人財育成に貢献する成果について公開した。
■2020年度の主な活動事例
(1)次世代バイオディーゼル燃料の実証実験(エネルギー専門部会)
2020年8月に、「ひろしま “Your Green Fuel” プロジェクト」として、地域で支える地産地消モデル実現のため、バイオディーゼル燃料の原料製造・供給から利用に至るまでのバリューチェーンを構築し、同燃料の利用を開始したことを公開した。同燃料は、微細藻類油脂や使用済み食用油を原料としており、とうもろこし等を原料としたバイオ燃料と比べて、食料競合や森林破壊のような問題が発生しない。
その後、5台(広島県、広島市、ファミリーマート、マツダ)の専用ラッピング/マグネットデカールデザイン車両で実証実験を継続しており、現時点で総走行距離約1万㎞に達し、いずれの車両でも燃料に関わる問題は発生していない。
(2)地域一体となったデジタルものづくり(MBD専門部会)
デジタル技術による技術革新が世界に広がる中で、商品の機能や性能、あるいは顧客や商品を取り巻く環境などを数理モデルで表現し、計算機によるシミュレーションを徹底的に行うことで、技術のブレークスルーを達成し新しい商品価値を生み出す「モデルベース開発(MBD)」は日本のものづくりが生き残るための切り札とも言える重要技術。この技術を地域全体に広げる活動を地域一体で 2015年より進めている。
その結果、地域企業において「インパネ衝撃解析の効率化」や「排気音の予測精度向上」などの実務上の成果が出ている。更に、MBDの考え方を、大学における学術研究と大学・企業による共同研究に適用することで、学術研究のブレークスルーを達成すると共に、学(サイエンス)から産(エンジニアリング)への橋渡しを効率的に行う「モデルベース研究(MBR)」の取り組みでは、2019年より広島大学デジタルものづくり教育センターにおいて、「材料モデルベースリサーチ」、「データ駆動型スマートシステム」、「スマート検査・モニタリング」の3プロジェクトで広島大学と地域企業でコンソーシアムを構成し、新材料開発、モノ造り革新、人財育成で成果を出している。
(3)小学生対象のプログラミング教室(イノベーション人財育成委員会)
新学習指導要領と地域としてのデジタル人財の育成・確保の必要性から、「自動車に関する課題への理解及び課題解決の手法としてコンピュータ制御やプログラミングの活用を学ぶ」、 「プログラミングの基本的な考え方の学びとともに、プログラミングで実際にモノを動かす楽しさを知る」ことを目的とし、ひろ自連主導で小学生対象としたプログラミング教室を開始した。
内容は、①自動車に関する社会課題などについてのビデオ学習、②人とコンピュータとの共通点からプログラミング的思考の基本及び、フローチャートを活用した手順の学び、③自動車型ロボット(ひろ自連号)を使ったプログラミングの体験。2019年の広島市内2校140名から開始し、2020年は広島県内16校980名に拡大し実施した。本年度以降も引き続き実施していく。
(4)東大ロケットin広島(イノベーション人財育成委員会)
この育成プログラムは、広島県教育委員会と東京大学先端科学技術研究センターがコラボで主催し、ひろ自連が活動場所と実車を提供する形の後援をすることで実現した。このプログラムは、小学生・中学生が体験を通して学んだことと、既有の知識や技能を結び付ける「学びの場」を提供することで、知的好奇心を喚起し、学び続ける力の育成を目指す。具体的には人間の英知の集合体である自動車がどのように動くのかを、人間の仕組みと比較するプロセスで、2020年10月に実車に触れることのできる環境で行った。本年度も継続予定。
■ひろ自連の概要
– 2030年産学官連携ビジョン:
・広島を、自動車に関する独創的技術と文化を追い求める人々が集まり、世界を驚かせる技術と文化が持続的に生み出される聖地にする。
・産業・行政・教育が一体になり、イノベーションを起こす人財をあらゆる世代で育成することにより、ものづくりを通じて地域が幸せになる。
・広島ならではの産学官連携モデルが日本における「地方創生」のリードモデルとなり世界のベンチマークとなる。
– 設置時期:2015年6月11日
– 目的:広島地域の自動車産業を活性化するための旗印として掲げた「2030 年産学官連携ビジョン」の着実な実現を図る
– 常任団体:公益財団法人ひろしま産業振興機構、マツダ株式会社、国立大学法人広島大学、中国経済産業局、広島県、広島市
– 事務局:公益財団法人ひろしま産業振興機構、マツダ株式会社および国立大学法人広島大学に置く
– 運営体制:
・委員会:運営企画委員会、イノベーション人財育成委員会、地域企業活性化委員会、広島県地方大学・地域産業創生事業推進特別委員会
・専門部会:内燃機関専門部会、モデルベース開発専門部会、エネルギー専門部会、感性専門部会