横浜ゴムは12月13日、サステナブル素材を活用したADVANレーシングタイヤを、コントロールタイヤとして、「全日本スーパーフォーミュラ選手権」に2023年から供給すると発表した。
同タイヤは、既にドライ用の開発が完了し、ウェット用も2023年からの供給を目指して開発を継続。ドライ用では、天然ゴムとアブラヤシの実やオレンジの皮から生成したオイルなど、各種自然由来の配合剤を活用すると共に、リサイクル鉄や廃タイヤから再生したリサイクルゴム、さらにマスバランス方式(※)の合成ゴムを採用。原材料全体の約33%をサステナブル素材としながら、2022年の現行タイヤと同等の性能を保持していると云う。
スーパーフォーミュラを統括する“日本レースプロモーション”は昨年10月、SDGsやカーボンニュートラルといった自動車、モータースポーツ業界を取り巻く環境変化に対応するため、サステナブルなモータースポーツ業界づくりを目的とするプロジェクト「SUPER FORMULA NEXT50(スーパーフォミュラー・ネクストゴー)」を発表。現在、様々な企業と共にその活動を推進している。
横浜ゴムは、このプロジェクトに賛同し、サステナブル素材を活用したレーシングタイヤを供給することを決定。走行性能を損なわずにサステナブル素材を採用していくことを目標に、今シーズンのスーパーフォーミュラ各大会の前後に設定された次期フォーミュラカーの開発テストに合わせてタイヤテストを実施。2023年以降も更なるサステナブル原料比率の引き上げに向け、タイヤ開発を継続していくと云う。
スーパーフォーミュラ2023年車両。
中期経営計画「YX2023」(2021~23年度)のタイヤ消費財事業に於いて、フラッグシップブランドの「ADVAN」、SUV・ピックアップトラック用ブランドの「GEOLANDAR」、そして「ウィンタータイヤ」の販売構成比率を最大化することを掲げる横浜ゴムは、モータースポーツ活動を先行技術開発とブランド強化の場と位置付け、培った技術を新車用・市販用タイヤの開発にフィードバック。また、サステナビリティ経営に於いては、「未来への思いやり」をスローガンに、事業活動を通じた社会課題への貢献を持続的な企業価値向上に繋げており、サーキュラーエコノミーではサステナブル素材の使用率を2030年に30%以上、2050年に100%とすることを目指していると云う。
※原料から商品への加工・流通工程に於いて、使用したバイオマス由来の原料と同じ重量だけ商品へバイオマス由来という特性を割り当てることができる手法。バイオマス由来の原料を割り当てられた商品については、実際のバイオマス由来原料の含有量とは関係なく、バイオマス由来商品と見做される。
[開発の経緯]
第1回:4月6日~7日(富士スピードウェイ)
タイヤの骨格を形成するケーシングとコンパウンドで、サステナブル素材比率の異なる4種類ずつのタイヤをテスト。サステナブル素材比率を上げたタイヤでも2022年シーズンで使用されている現行タイヤと同等程度の性能を確認した。
開発車両の“白寅(ホンダ)”と“赤寅(トヨタ)”。
第2回:4月25日~26日(鈴鹿サーキット)
サステナブル素材比率の異なる8種類のテストタイヤと、2022 年シーズンで使用されている現行タイヤとの比較テストを実施。テクニカルな高速コーナーを有しタイヤへの負荷が特に高いコースでのロング走行で、次期フォーミュラカーの新たな空力とのマッチングと耐久性を確認した。
ダウンフォース量を軽減したSF19ベースのテスト車両。
第3回:5月18日~19日(オートポリス)
これまでのテストで評価の良かったケーシングとコンパウンドの組み合わせで試作したタイヤを前回と異なるコース特性で評価した他、これまでの2仕様のコンパウンドに加えて改良版3仕様を新たに評価。予定していたテストメニューを全て実施し、十分なデータを得た他、ロングランテストでも実戦に近い距離の走行を実施した。
テストドライバーを務めた塚越広大選手。
第4回:6月20日~21日(スポーツランドSUGO)
前回のテスト結果から絞り込んだケーシングとコンパウンドの仕様をテストし、異なるサーキットでのフィーリングの違いを再確認。仕様の絞り込みが順調に進んでいることから、ロングランテストを重点的に実施し、高温環境下での摩耗評価を実施した。
ロングランテストの様子。
第5回:7月18日~19日(富士スピードウェイ)
雨天となった2日目に初めてウェット路面でのテストを実施。午前は雨量の少ないダンプ路面、午後は雨量の多いウェット路面と、異なる条件下での比較をした上でロングランテストも行い、貴重なウェットコンディションでのデータを得た。
ウェット路面での走行テスト。
第6回:10月26日~27日(鈴鹿サーキット)
来シーズンから導入するカーボンニュートラルに対応し、フルアップデートした新型車両「SF23」に、これまでの結果から絞り込んだケーシングテストとコンパウンドのテスト仕様を持ち込んで臨んだ。テストドライバーから、「スーパーフォーミュラ用のコントロールタイヤとして十分な性能を持っている」との評価を得て、新しいドライ用タイヤの最終仕様を決定した。
テストドライバーを務めた石浦宏明選手(左)と開発者。
第7回:11月21日~22日(モビリティリゾートもてぎ)
初日は、ウェット用タイヤの仕様の決定に向けて散水テストを実施。7月の富士スピードウェイで使用したタイヤとその結果を踏まえて準備した改良品の3仕様を持ち込み、2022 年シーズンで使用されている現行タイヤとの比較を実施。今後、2023年向けウェット用タイヤの仕様開発を更に煮詰めていった。2日目は、ドライ用タイヤの更なるサステナブル原料比率の引き上げに向けた先行開発品の評価も実施した。
ウェットタイヤテスト品。