英国から排出される使用済みバッテリーから、国内最大の低炭素カソードとアノード材料を提供する英企業のアルティリウム(Altilium)は9月26日(英国プリマス発)、使用済みEVバッテリーから回収した素材を使用し、新たなEV向けバッテリーセルを製造・検証するプロジェクトの実施を明らかにした。
なお同プロジェクトは、Advanced Route to Market Demonstrator( ARMD / 英国研究イノベーション機構を介して自国製ZEVに係る研究開発プロジェクトを支援するコンペティション制度 )のAdvanced Propulsion Centre UKからの支援により成立。
英国内で初めて、回収されたカソード活性材料(CAM)を使用し製造するバッテリーセルを実証する。より具体的には、大手自動車OEMの車両での実使用が検証される見込み。
上記を踏まえアルティリウムは、英プレミアムメーカーのJLRと連携。自社のリサイクルプロセスとして特許を出願したEcoCathode™を介してEV の炭素排出量を大幅に削減させる試みを活かしていく。
アルティリウムは同リサイクルプロセスを介してリチウム、コバルト、ニッケルなどの重要材料を回収。新たに採掘する材料の必要性を減らして、炭素排出量を60%削減させると謳っている。
なおバッテリーセル自体の生産は、英・国立バッテリー製造スケールアップ施設の英国バッテリー工業化センター(UKBIC)で、アルティリウムがデボン州に新設するミニ商業施設ACT2と、パイロット施設ACT1で生産した回収バッテリー材料を使用して行われる。またこれを受けてJLRは最先端のバッテリー試験施設で、蓄電池のパウチセルに関する包括的な検証研究を実施する。
この取り組みについてアルティリウムで最高執行責任者を務めるクリスチャン・マーストン博士は、「このプロジェクトにより、英国に於けるバッテリー材料の循環型経済に一歩近づくことができ、JLRと共同で、そんな先駆的な試みを主導できることを心から誇りに思います。
回収された材料から作られたEV向けのバッテリーセルが、英自動車業界の厳格な基準を満たすことができることを身を以て実証することで、バッテリー生産の環境影響を軽減させることができます。
また、それにより、我が国に於ける持続可能を備えた強力なEVに係るサプライチェーンの構築を支援できることになります。
そうした意味で同プロジェクトは、バッテリーバリューチェーンの脱炭素化と、自動車製造に係るOEMの持続可能性を後押しするという重要なマイルストーンとなります」と述べた。
これを受けて英国パッテリー工業化センター(UKBIC)でマネージングディレクターを務めるショーン・ギルガン氏は、「我が国の自動車産業界が、クリーンな未来に向かって前進していくことに貢献する同プロジェクトに参加できることを嬉しく思います。
バッテリーエコシステムに於ける私たちの役割は、英国内の全ての企業が新しい材料や技術を産業化できることを証支援することにあります。アルティリウムと協力することで、リサイクルされたCAMが将来のEV向けバッテリーづくりに於いて、最も有効な選択肢になり得ることを証明していきます」と語った。
最後にファラデー研究所による新しい調査によると、英国内のEVバッテリー製造能力に対する需要は、2030年に年間約110GWhに達することが示されている。それゆえ英国は、この需要を満たすためにEVバッテリーの製造に必要なリチウム、コバルト、ニッケルなどの原材料を大量に確保する必要がある。
ゆえに、これらの原材料を用いた持続可能性が高いサプライチェーンの構築は、英国交通の電化にとって重要要素となる。現段階でアルティリウムが計画しているティーズサイドのハブは、英国最大の統合バッテリーリサイクル施設となって年間15万個のEVバッテリーを処理し、英国ギガファクトリー施設に年間3万トンのCAMを供給できるようになると結ばれている。