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2024年9月27日【ESG】

英アルティリウム、回収EV電池の再生セル製造&実証へ

坂上 賢治

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英国から排出される使用済みバッテリーから、国内最大の低炭素カソードとアノード材料を提供する英企業のアルティリウム(Altilium)は9月26日(英国プリマス発)、使用済みEVバッテリーから回収した素材を使用し、新たなEV向けバッテリーセルを製造・検証するプロジェクトの実施を明らかにした。

 

なお同プロジェクトは、Advanced Route to Market Demonstrator( ARMD / 英国研究イノベーション機構を介して自国製ZEVに係る研究開発プロジェクトを支援するコンペティション制度 )のAdvanced Propulsion Centre UKからの支援により成立。

 

英国内で初めて、回収されたカソード活性材料(CAM)を使用し製造するバッテリーセルを実証する。より具体的には、大手自動車OEMの車両での実使用が検証される見込み。

 

 

上記を踏まえアルティリウムは、英プレミアムメーカーのJLRと連携。自社のリサイクルプロセスとして特許を出願したEcoCathode™を介してEV の炭素排出量を大幅に削減させる試みを活かしていく。

 

アルティリウムは同リサイクルプロセスを介してリチウム、コバルト、ニッケルなどの重要材料を回収。新たに採掘する材料の必要性を減らして、炭素排出量を60%削減させると謳っている。

 

なおバッテリーセル自体の生産は、英・国立バッテリー製造スケールアップ施設の英国バッテリー工業化センター(UKBIC)で、アルティリウムがデボン州に新設するミニ商業施設ACT2と、パイロット施設ACT1で生産した回収バッテリー材料を使用して行われる。またこれを受けてJLRは最先端のバッテリー試験施設で、蓄電池のパウチセルに関する包括的な検証研究を実施する。

 

 

この取り組みについてアルティリウムで最高執行責任者を務めるクリスチャン・マーストン博士は、「このプロジェクトにより、英国に於けるバッテリー材料の循環型経済に一歩近づくことができ、JLRと共同で、そんな先駆的な試みを主導できることを心から誇りに思います。

 

回収された材料から作られたEV向けのバッテリーセルが、英自動車業界の厳格な基準を満たすことができることを身を以て実証することで、バッテリー生産の環境影響を軽減させることができます。

 

また、それにより、我が国に於ける持続可能を備えた強力なEVに係るサプライチェーンの構築を支援できることになります。

 

そうした意味で同プロジェクトは、バッテリーバリューチェーンの脱炭素化と、自動車製造に係るOEMの持続可能性を後押しするという重要なマイルストーンとなります」と述べた。

 

 

これを受けて英国パッテリー工業化センター(UKBIC)でマネージングディレクターを務めるショーン・ギルガン氏は、「我が国の自動車産業界が、クリーンな未来に向かって前進していくことに貢献する同プロジェクトに参加できることを嬉しく思います。

 

バッテリーエコシステムに於ける私たちの役割は、英国内の全ての企業が新しい材料や技術を産業化できることを証支援することにあります。アルティリウムと協力することで、リサイクルされたCAMが将来のEV向けバッテリーづくりに於いて、最も有効な選択肢になり得ることを証明していきます」と語った。

 

最後にファラデー研究所による新しい調査によると、英国内のEVバッテリー製造能力に対する需要は、2030年に年間約110GWhに達することが示されている。それゆえ英国は、この需要を満たすためにEVバッテリーの製造に必要なリチウム、コバルト、ニッケルなどの原材料を大量に確保する必要がある。

 

ゆえに、これらの原材料を用いた持続可能性が高いサプライチェーンの構築は、英国交通の電化にとって重要要素となる。現段階でアルティリウムが計画しているティーズサイドのハブは、英国最大の統合バッテリーリサイクル施設となって年間15万個のEVバッテリーを処理し、英国ギガファクトリー施設に年間3万トンのCAMを供給できるようになると結ばれている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。