トヨタ自動車は3月1日、送迎車としてニーズの高いハイエースを対象とした「飛沫感染対策セパレータ」を、全国のトヨタ車両販売店、レンタリース店を通じて同日より販売店装着の純正用品として発売した。
なお設定対象は、ハイエースのワゴン「グランドキャビン」「GL」「DX」、ハイエースのコミューター「GL」「DX」、ハイエースのウェルキャブ(メーカー完成特装車)車いす仕様車、ウェルジョイン、ハイエースのTECS(メーカー特装車)幼児バス、ビジネス送迎車“ファインテックツアラー”となっており、2013年マイナーチェンジ以降の車両を対象に装着可だ。
より具体的には、ハイエースのワゴン、コミューターとともにメーカー完成特装車(ウェルキャブならびにTECS)に於いて、フロントシートとリヤシートの間に装着するもので、病院や福祉施設、観光での送迎など乗客や運転手の飛沫感染リスクを低減、安心して乗車できることを狙いとしている。但し添付の写真で見た通りの仕様であるから、トヨタでも完全に飛沫を遮断するものではないとしており、換気のため外気設定や窓を開けるなどの対応は欠かせない。
以下はグランドキャビン(ハイルーフ仕様)装着イメージとなる。
以下は車いす仕様車Bタイプ 装着イメージとなる。
トヨタはコロナ禍に於いても、「もっといいクルマづくり」を支える製造現場のモノづくり力やTPS(トヨタ生産方式)を活かし、マスクやフェイスシールドの生産、医療用防護ガウンの生産性向上支援、足踏み式消毒スタンド「しょうどく大使」の市販化などを推進。また、飛沫循環抑制車両の提供にも取り組んできた。
ちなみにTPSは、トヨタ自動車工業(当時)の大野耐一氏や鈴村喜久雄氏らが生産ラインのムダを排除するために確立した生産方式を指す。最も重要なのは、7つのムダを定義していること。それらを排除するために「ジャストインタイム」と「自働化」の2本柱で体系化されている。
その7つのムダとは、(1)その時点で必要のないものを余分に作ることに対する「つくりすぎのムダ」 、(2)前工程からの部品や材料を待って仕事ができないことによる「手待ちのムダ」、 (3)モノの必要以上の移動、仮置き、積替えなどに起因する「運搬のムダ」、 (4)従来からのやり方を継続して本当に必要かどうか検討せず、本来必要の無い工程や作業を行うという「加工そのもののムダ」、(5)完成品、部品、材料が倉庫など保管され、すぐに使用されていないなどの「在庫のムダ」 、(6)探す、しゃがむ、持ち替える、調べるなど不必要な動きのを指す「動作のムダ」、 (7)不良品を廃棄、手直し、作り直しすることによる「不良をつくるムダ 」となっている。
トヨタ生産方式では、これら一般的な生産方式で発生している管理など、顧客にとっての価値を生まない活動をムダと定義し、改善していくための仕組みがある。同方式では顧客(後工程)のニーズが生産計画に自動で落とし込まれ、各工程が必要なものを必要な時に必要なだけ生産・供給できる。つまり顧客のニーズに沿ったものだけをムダなく生産・供給できることが大きな違いといえるだろう。
さて同記事の本題である「飛沫感染対策セパレータ」は、飛沫循環抑制車両提供の活動を知った多くの車両ユーザーから、トヨタ車両販売店を通じて送迎で使用するハイエースにも装着可能なセパレータがすぐ欲しいとの声を寄せられたことから検討が進められてきた。いち早く商品化し届けるため、元々ハイエースのバンに設定されているトヨタ純正用品「ルームセパレータカーテン」をベースとした試作品を医療や福祉の現場に持ち込み、使い勝手など現場のニーズを聞き徹底して「カイゼン」を重ねた結果の製品化となった。
製品開発に於いては、洗浄などを考え脱着可能とし、車内の状況を把握し易いように透明なビニール素材を全面に採用。また前後席のどちらからでもファスナーにてセパレータを開閉可能とするなど、誰もが使いやすく、また手に入れやすい純正用品として誕生した。
これらの取り組みは、人々が幸せになるモノやサービスを提供すること、すなわち「幸せを量産する」トヨタ自動車の取り組みであるトヨタフィロソフィーのひとつだ。
フィロソフィーコーン