トヨタ自動車傘下の北米事業体Toyota Motor North America, Inc.(TMNA)は10月20日、テスラ社と2025年からバッテリーEV(BEV)に北米充電規格(NACS/North American Charging Standard)を採用することで合意に至ったことを公表した。( 坂上 賢治 )
今合意により、トヨタ及びレクサスのユーザーは、北米全域で12,000基以上のテスラのスーパーチャージャー(急速充電設備)を利用できるようになる。
現時点でトヨタ車とレクサス車のユーザーは、アプリを通じてACレベル2やDC急速充電ステーション等の充電ネットワークへアクセスできるが、今回のNACS採用により、DC急速充電ステーションを含む、更に多くの充電インフラが利用可能となって自社BEVユーザーの行動範囲拡大に繫がるとしている。
またトヨタとレクサスは、2025年からトヨタ・モーター・マニュファクチャリング・ケンタッキー(TMMK)で生産予定の3列シートSUVを含む、一部のトヨタとレクサスのBEVにNACSポートを搭載する。
更にCCS規格(Combined Charging System : コンボ)を搭載したトヨタ車やレクサス車を所有・リースしているユーザーに向けては2025年以降、NACS充電を可能にするアダプターの提供を予定。
今回のNACS系チャージャーの利用拡大にあたってトヨタは、「多様な選択肢を提供するという電動化戦略に則り、充電についても、それぞれの地域にあったサービスを提供し、自宅でも公共の場でも不自由のない充電体験を通じ、お客様の利便性向上を目指してまいります」と話している。
結果、北米では先の7月26日以降(フォードは米時間の5月25日段階でNACS利用を公表)、ホンダ傘下のアメリカン・ホンダモーター、BMWグループ、ゼネラルモーターズ(GM)、ヒョンデ、キア、メルセデス・ベンツグループ、ステランティスNV、ボルボ、日産と相次いでNACS採用に動き、NACSがデファクトスタンダードになりりつある。
もちろんテスラ以外の米国メーカー製EVが採用してきたCCS1(コンボ規格・北米版)規格も引き続き利用されるものの、テスラが実業上に於いて、他メーカーへNACSの利用を呼び掛けた他、バイデン政権が打ち出していたEV拡大政策に乗じるなどのロビー努力も実り、Tesla charging connectorの北米充電標準規格へ向けた戦略が成功。
そもそも当初テスラは、充電時にユーザーの車両走行・使用データを吸い上げるべく(納車済み車両を含むハード&ソフトウエアのアジャイル改良・開発に利用していく思惑もあり)、充電設備の完全自前化に動いた訳だが、つまるところ自動車メーカー自身が、充電インフラの独自構築に責任を持つことに動いたテスラに利する格好となった。
これで北米の充電網はNACSへ。その他のエリアは現段階で、欧州の充電網はCCS2(コンボ規格・欧州版)、日本はCHAdeMO(チャデモ)となっているものの、今後、充電インフラ網の構築については、個別地域に於ける利用ユーザーを味方につける戦略づくりも求められることになるだろう。