TOYO TIRE (トーヨータイヤ)は7月16日、独自の高効率・高精度タイヤ設計プラットフォーム「T-MODE(ティーモード)」に、ヒューレット・パッカード エンタープライズ社製の「第7世代HPCシステム(High-Performance Computing system)」を新たに採用。より高性能なタイヤを、よりスピーディーに開発する商品開発基盤を整えたことを発表した。
同社では、スーパーコンピューターをタイヤづくりのコアリソースとして位置づけ、導入した40年前から常にそのスペックアップを続けており、また、これに用いる、タイヤの構造解析用ソフトウェアを独自開発。
2019年には、CAE(※1)による従来のタイヤ設計基盤技術にAI技術を用いた設計支援技術を組み込み、新型「T-MODE」として進化させるなど、タイヤの構造と車両の挙動双方をシミュレーションし、市場で求められる商品をより科学的に追求することで、その最適化を図ってきたと云う。
※1:Computer Aided Engineeringの略。コンピューター支援技術。
タイヤ設計基盤技術のさらなる高度化
EVの普及拡大をはじめ、自動運転技術、SDV(※2)戦略など、次世代モビリティに関わる技術革新が次々と社会実装フェーズへと進展を続ける現在、タイヤには、その進化を支える性能や機能のスピーディーな実現が求められていることから、同社では、今後、さらなる設計の高精度化・高速化が重要なカギを握ると考えていると云う。
そこで今回、最新HPCシステムの導入を機に現行T-MODEのソフトウェアの最適化を行い、従前まで要していた設計者が利用する大規模シミュレーションの計算時間を最大2分の1以下に短縮、シミュレーションデータの蓄積を加速。
タイヤの構造や形状、パターンといった設計仕様を性能値から導き出すディープラーニングモデルの「逆問題」の予測精度向上も期待できる、次世代技術の実現に向けた対応体制をさらに充実させ、高度化した。
なお、T-MODEについては、2月に北米市場で販売が開始されたピックアップトラック/SUVのEV向け大口径タイヤ「OPEN COUNTRY A/T III EV」の開発に於いて、各性能進化の実現に大きく貢献。同社では、今回の進化(空力予測や材料物性予測などの大規模シミュレーションの飛躍的な実行回数増大)により、今後、EV用タイヤには欠かせない要求性能である転がり抵抗や耐摩耗性に優れた製品の早期具現化が期待できるとしている。
トーヨータイヤは、自動車開発プロセスに組み込まれる急速なデジタルの進化に合わせて、タイヤの設計開発に於ける高精度化や、開発期間の短縮、シミュレーション技術の高度化を進め、CAEを活用したエコシステムの構築へと繋げていくとしている。
※2:Software Defined Vehicleの略。ソフトウェアをアップデートすることでモビリティとしての機能を最新化できる自動車。