既存のマイクロEVなどを自動運転化させ、地方創生や観光活性化に貢献したい意向
先の大戦前にあたる1948年(昭和23年)にユニオン電気商会として創業。現在カーナビゲーションシステムなどを販売している専門商社の東海クラリオン株式会社(愛知県名古屋市中区正木、代表取締役:安部 源太郎)は7月7日、国内外の地域事情に沿って様々な車両を選べる〝後のせ自動運転システム〝YADOCAR-iドライブ(ヤドカリ・ドライブ)〟(限定地域で自動運転レベル4を実現する)〟の開発と、同システム提供の意向を明らかにした。
そもそも同社は、通信機能を備えたドライブレコーダーなどを組み合わせたADAS(運転支援)システムを構築して名古屋市交通局を始めとする運輸事業者に納入するなど、自動運転レベル3(システム側からの要請があった場合、即時、手動運転に応えなければならない)までの後付けシステムを開発・販売して来た実績を持っている。
ヤドカリ発想の原点となったのは、2019年度の測位衛星みちびき利用の実証公募
そんな東海クラリオンが、〝YADOCAR-iドライブ〟の開発に取り組む事になった切っ掛けは、2019年度の測位衛星みちびきを利用した実証実験公募「MADOCA PPP高精度位置情報を使ったマイクロEV自動運転の実証実験」として同社の提案が採択された事が契機となった。
そうした中で、予てよりマイクロEVによる自動運転車の可能性を語ってきた技術ベンチャーのアジア・テクノロジー・インダストリー(ATI)代表の長尾朗氏(元ホンダ技研在席の技術者)との協業を開始。
翌2020年2月にタイで行われた実証実験(記事末尾の動画を参照)では、国際航業が作成した高精度地図を使用して、アジア太平洋地域への展開等を想定した測位衛星みちびき2~4号機のL6Eチャンネルで送信される実証実験向けのセンチメータ級測位補強信号を高精度単独測位(MADOCA)に利用した。
特に仰角が一定となる測位衛星みちびき3号機(静止衛星)からの信号を主に受信しGISTDA(タイ地理情報・宇宙技術開発機関)敷地内に設けた仮設のテストコースで〝YADOCAR-iドライブ〟を使った自動運転車の実証実験に成功した。
一般的な自動運転車への導入コストに比べ、2割程度の投下コストで構築可能
そのシステム自体は、先のみちびきによるGPSを自車位置測位に利用しつつ、2D+3Dライダー(レーザースキャナー)、IMU(慣性計測装置)を組み合わせる事で、走行中の周辺に存在する物体の検知精度を高めた仕様となっている。但しレベル4が可能としているものの、特定地域に於ける実運用想定では、地域拠点からのもしもの時の遠隔監視もパッケージしていく考えであるとしている。
それでも〝特定地域の固定ルート〟を前提としている事。〝絶対速度自体が限られる〟マイクロモビリティを対象とするシステムゆえに、一般的な自動運転車への導入・運用コストに比べると、おおよそ2割程度の投下コストで構築出来るとしている。
また今後は、先の遠隔監視環境の構築を考えローカル5G(第5世代移動通信システム)環境を敷く事も視野に入れているとも述べている。
今後は、日本国内で2,200カ所はあると言われる住民の高齢化が進む新興住宅地などを対象に、パワーが制限されているためスピードが出せないマイクロEVゆえの弱みを〝扱い易さ〟という強みに置き換え、安全で安価な自動走行制御のシステムの構築を目指す。
自治体が抱える生活の足や人手不足の改善を解決する活動を行っていきたい
そこで東海クラリオンは、これまでの成果を先の6月29日(水)から開催されていた『自治体・公共Week2022 第2回スマートシティ推進EXPO』で披露した。
同社が発表の場としてこの催事を選んだ理由は、地方自治体が抱えている現実的な悩みを聞き取り、実際に利用する人々のニーズに何が最も合うか、現場で自動運転へ期待する事柄は一体何なのかを広く聞くためだったと言う。
実際、3日間の出展を終えてブースを訪れた721人(自治体関係者22%、メーカー・製造業18%、IT・通信15%、小売・サービス業13%、建設業・開発事業者7%、その他25%)からアンケートを収集。
地方などで役立つ「どのような軽車両でも自動運転化できるヤドカリ発想」についての意見を求めたところ、改めて地方創生、地域活性化、DX化などで新たなニーズが浮き彫りになったと話している。
東海クラリオンでは、来たるべき道路交通法改正に伴う自動運転レベル4での公道走行解禁を視野に今後のYADOCAR-iドライブについて「国や自治体と連携や運営について検討し、自治体が抱える生活の足や人手不足の改善を解決する活動を行っていきたいとの抱負を述べた。なお〝YADOCAR-i ドライブ〟の概要説明、機能説明、技術説明については以下のダイジェスト動画を参照されたい。