ナビタイムジャパンの交通コンサルティング事業は9月9日、2021年7月19日(月)~8月9日(月)および2021年8月24日(火)~9月5日(日)まで実施された首都高速道路の交通規制に伴う交通影響調査を発表した。
これまでにも交通コンサルティング事業では、新規開通道路における開通効果分析や、大型連休における渋滞分析、工事規制や災害時の通行止めによる交通迂回状況といった分析を実施している。
この発表では、オリンピック・パラリンピック東京2020大会の開催に伴う首都高速道路の交通規制を対象としている。交通規制は、イベント関係者の安全で円滑な輸送と、物流を含めた都市活動の安定との両立を図ることを目的とし、イベント開催期間中、首都高速道路の各路線の出入口において、終日閉鎖や交通状況に応じた一時閉鎖が実施された。
今回、交通状況に応じた一時閉鎖対象の出入口のうち、首都高速道路3号渋谷線 三軒茶屋入口と、首都高速道路4号新宿線 永福入口の2箇所に着目し、自動車の走行経路変化や所要時間について分析した。
なお、分析にはナビタイムジャパンが提供するカーナビアプリ(『カーナビタイム』、『トラックカーナビ』他)から取得した走行実績データを活用し、規制開始前週の7月12日(月)(以下、平常時)、および規制開始日の7月19日(月)(以下、規制開始時)、オリンピック競技大会開幕日の7月23日(金・祝日)(以下、オリンピック開幕時)、パラリンピック競技大会開幕日の8月24日(火)(以下、パラリンピック開幕時)における7時~19時までの交通状況を比較した。
■分析内容
①首都高速道路3号渋谷線・国道246号の交通状況
【走行経路の変化:三軒茶屋入口から首都高速道路を利用する車両が20~25%減少】
首都高速道路3号渋谷線 三軒茶屋入口付近から渋谷方面に走行する車両の走行経路を可視化した。平常時は44%が三軒茶屋入口から首都高速道路に乗り、56%が国道246号を走行している。一方、規制開始時には首都高速道路に乗る車両が19%、パラリンピック開幕時には20%と、平常時と比べ約20~25%減少している。
【所要時間の変化:国道246号 三軒茶屋から池尻方面への平均所要時間が増加】
首都高速道路3号渋谷線 用賀入口から池尻出口付近および並行する国道246号 三軒茶屋から池尻方面への所要時間を7時~19時(以下、日中12時間)、7時~10時(以下、朝時間帯)、16時~19時(以下、夕時間帯)の3つの時間帯で比較した。
まず首都高速道路 用賀入口から池尻出口付近までの平均所要時間を見ると、平常時の日中12時間は約8分だが、朝時間帯は混雑が発生し約12分だったことがわかる。一方、規制開始時はいずれの時間帯も平均所要時間が約5~6分で、特に朝時間帯は平常時と比べ7分ほど短縮している。また、オリンピック開幕時は日中12時間、朝時間帯ともに平常時と比較し平均所要時間が短縮しているが、夕時間帯はあまり変化がなかった。パラリンピック開幕時は日中12時間、朝時間帯とも平常時と比較し所要時間が短縮傾向だが、夕時間帯は11分と、4分ほど増加している。
一方、国道246号 三軒茶屋から池尻までの所要時間を見ると、平常時は平均約5分で走行しているが、規制開始時は14分と約9分所要時間が増加している。特に朝時間帯の平均所要時間約17分を見ると、平常時の約6分と比較し11分ほど増加している。一方、オリンピック開幕時はいずれの時間帯とも平常時と比較し所要時間が大幅に短縮しているが、パラリンピック開幕時は平常時と比較するといずれの時間帯も所要時間が増加傾向であり、特に朝時間帯は約7分増加している。
②首都高速道路4号新宿線・国道20号の交通状況
【走行経路の変化:永福入口から首都高速道路を利用する車両が10%前後減少】
首都高速道路4号新宿線 永福入口付近から新宿方面に走行する車両の走行経路を可視化した。平常時は18%が永福入口から首都高速道路に乗り、82%が国道20号を走行している。一方、規制開始時には首都高速道路を走行する車両が7%、パラリンピック開幕時には10%と、平常時と比べ10%前後減少している。
【所要時間の変化:国道20号 高井戸から大原交差点方面への平均所要時間が増加】
首都高速道路4号新宿線 高井戸入口から初台出口付近および並行する国道20号 高井戸から大原交差点方面への所要時間を7時~19時(以下、日中12時間)、7時~10時(以下、朝時間帯)、16時~19時(以下、夕時間帯)の3つの時間帯で比較した。
まず首都高速道路 高井戸入口から初台出口付近まで平均所要時間を見ると、平常時の日中12時間は約10分だが、朝時間帯は混雑が発生し約14分だったことがわかる。一方、規制開始時はいずれの時間帯も平均所要時間が約6~7分で、特に朝時間帯は平均時と比べ7分ほど短縮している。また、オリンピック開幕時はいずれの時間帯とも平常時と比較し所要時間が短縮している。パラリンピック開幕時は日中12時間、朝時間帯とも平常時と比較し所要時間が短縮傾向だが、夕時間帯は約11分と、2分ほど増加している。
一方、国道20号 高井戸から大原交差点までの所要時間を見ると、平常時は平均約7分で走行しているが、規制開始時は約12分と5分ほど所要時間が増加している。特に朝時間帯の平均所要時間約21分を見ると、平常時の約11分と比較し10分ほど増加している。一方、オリンピック開幕時は平常時と比較し所要時間が短縮もしくは同じだが、パラリンピック開幕時は平常時と比較するといずれの時間帯も所要時間が増加傾向であり、特に朝時間帯は約4分増加している。
■分析結果
規制開始時、オリンピック開幕時、パラリンピック開幕時のそれぞれで、平常時より首都高速道路3号渋谷線 三軒茶屋入口付近から渋谷方面と、首都高速道路4号新宿線 永福入口付近から新宿方面へ走行する車両割合の減少と、各高速道路と並行する国道246号、国道20号の走行車両割合の増加が見られることから、普段、首都高速道路を利用するドライバーの一部が並行する国道に転換したことが推測される。
その結果、その入口付近の首都高速道路を走行する際の所要時間は多くの時間帯で減少傾向、また両国道の所要時間の増加傾向に繋がったと考えられる。