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2023年1月17日【アフター市場】

タウ、損害車の対処方法を提案するAI見積もりサービスを開始

山田清志

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損害車の買い取りを手がけるタウは1月17日、「カーテンダー」のサービスブランド名で、交通事故や損害で損傷を受けた車両の修理、あるいは売却の最適な選択を提案する「AI見積もり」サービスを開始したと発表した。クルマの損傷箇所と車検証に記載されたQRコードをスマートフォンで撮影するだけで、AI解析によって修理費用や売却金額を瞬時に提示するという。(経済ジャーナリスト 山田清志)

 

116万台の損害車をリユース・リサイクル

 

「当社はこれまで法人をメインとしたビジネスを展開してきたが、今後は一般ユーザーに向けたサービスの提供を強化していきたい」

 

タウの宮本明岳社長

 

タウの宮本明岳社長は記者会見の冒頭、こう話し始めた。同社は1997年6月に設立した会社で、交通事故や風水害で何らかの損傷を負ったクルマの買い取り、販売を行っている。現在、北は北海道から南は沖縄まで17の拠点を持ち、そこで買い取ったクルマを独自に開発したインターネットサイトを通じて、世界124カ国14万人の会員に販売している。

 

「創業当初はバブル経済が終焉を迎えていたが、高度経済成長によって大量に販売されたクルマの不法投棄や不適切な処理が深刻化していた。また、交通事故や風水害に遭った車両の中にも、適切な処理をすればまだ使用できるクルマが大量に処分されている状況だった。

 

そんな中、海外生活が長かった創業者は、海外では壊れているクルマでも大切に扱われているのに、日本では簡単にクルマが廃棄されているのを見て、まだ価値のあるものを不要な人から必要な人へというコンセプトに基づきタウを創業した」と宮本社長は振り返る。

 

同社は「クルマ(CAR)を大切に(TENDER)」という理念のもと、「カーテンダー」というブランドを立ち上げ、これまでに116万台の損害車をリユース・リサイクルしてきた。そのCO2削減量は350万トンにのぼるそうだ。2022年には損害車を5万4000台買い取り、市場シェアは20%を超え、業界ナンバーワンとのことだ。ちなみに、その平均買い取り価格は平均30万円だった。

 

わずか30秒で損害車の最適な対処法を提案

 

しかし、損害車をどのように処理していいかわからないユーザーも少なくなかった。加藤善久上席執行役員によると、「事故に遭ったドライバーはその修理費用や売却価格を知るために、ディーラーや板金修理業者、中古車買い取り店など多岐にわたる選択肢のもと商談を進めることを余儀なくされており、時間的かつ心理的な負担が強いられていた。しかも、修理業者の修理料金表や買い取り実績を見ても、自分の車が実際にいくらになるのかわからないことがほとんどだった」という。

 

算出結果

 

そこで、ユーザーのそうした困りごとを解決しようと始めたのが、「AI見積もり」という新サービスだったわけだ。まず手持ちのスマートフォンで「AI見積もり」にアクセスする。そして、希望する見積もり内容を「修理または買取についての最適な提案を受けたい」「修理見積もり」「買取見積もり」の3つの中から選ぶ。次にクルマの車検証QRコードとクルマの画像を撮影。その撮影では、案内に沿って6方向から撮影することになっている。

 

算出結果

 

すると、30秒ほどで、修理金額や買取金額、さらに「修理して乗り続けるか」または「売却して乗り換えるか」の最適な対処方法を提案してくれるのだ。さらにそのままカーテンダーに依頼もできるという。全国に100店舗のネットワークを築いており、そこで見積もりに合わせた料金で修理などを行ってくれる。「確かな技術とコストパフォーマンスの良い修理サービスが受けられる」と加藤上席執行役員。

 

タウは世界最大のリサイクル商社を目指し、損害車ビジネスで培ったノウハウを活用して、損害車のみならず、日本で不要となったプレジャーボートやフォークリフト、建設機械、トラックなどにも取り扱いの幅を広げ、世界規模で必要な人に商品を届けている。

 

現在、このような循環型ビジネスをフィリピンやマレーシアでも水平展開し、今後は台湾ベトナム、インドネシア、インドなどにも広げていく。さらには今年7月には自動車解体事業にも参入する計画だ。タウのリユース・リサイクルの取り組みはさらに加速していくことになりそうだ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。