損害車の買い取りを手がけるタウは1月17日、「カーテンダー」のサービスブランド名で、交通事故や損害で損傷を受けた車両の修理、あるいは売却の最適な選択を提案する「AI見積もり」サービスを開始したと発表した。クルマの損傷箇所と車検証に記載されたQRコードをスマートフォンで撮影するだけで、AI解析によって修理費用や売却金額を瞬時に提示するという。(経済ジャーナリスト 山田清志)
116万台の損害車をリユース・リサイクル
「当社はこれまで法人をメインとしたビジネスを展開してきたが、今後は一般ユーザーに向けたサービスの提供を強化していきたい」
タウの宮本明岳社長
タウの宮本明岳社長は記者会見の冒頭、こう話し始めた。同社は1997年6月に設立した会社で、交通事故や風水害で何らかの損傷を負ったクルマの買い取り、販売を行っている。現在、北は北海道から南は沖縄まで17の拠点を持ち、そこで買い取ったクルマを独自に開発したインターネットサイトを通じて、世界124カ国14万人の会員に販売している。
「創業当初はバブル経済が終焉を迎えていたが、高度経済成長によって大量に販売されたクルマの不法投棄や不適切な処理が深刻化していた。また、交通事故や風水害に遭った車両の中にも、適切な処理をすればまだ使用できるクルマが大量に処分されている状況だった。
そんな中、海外生活が長かった創業者は、海外では壊れているクルマでも大切に扱われているのに、日本では簡単にクルマが廃棄されているのを見て、まだ価値のあるものを不要な人から必要な人へというコンセプトに基づきタウを創業した」と宮本社長は振り返る。
同社は「クルマ(CAR)を大切に(TENDER)」という理念のもと、「カーテンダー」というブランドを立ち上げ、これまでに116万台の損害車をリユース・リサイクルしてきた。そのCO2削減量は350万トンにのぼるそうだ。2022年には損害車を5万4000台買い取り、市場シェアは20%を超え、業界ナンバーワンとのことだ。ちなみに、その平均買い取り価格は平均30万円だった。
わずか30秒で損害車の最適な対処法を提案
しかし、損害車をどのように処理していいかわからないユーザーも少なくなかった。加藤善久上席執行役員によると、「事故に遭ったドライバーはその修理費用や売却価格を知るために、ディーラーや板金修理業者、中古車買い取り店など多岐にわたる選択肢のもと商談を進めることを余儀なくされており、時間的かつ心理的な負担が強いられていた。しかも、修理業者の修理料金表や買い取り実績を見ても、自分の車が実際にいくらになるのかわからないことがほとんどだった」という。
算出結果
そこで、ユーザーのそうした困りごとを解決しようと始めたのが、「AI見積もり」という新サービスだったわけだ。まず手持ちのスマートフォンで「AI見積もり」にアクセスする。そして、希望する見積もり内容を「修理または買取についての最適な提案を受けたい」「修理見積もり」「買取見積もり」の3つの中から選ぶ。次にクルマの車検証QRコードとクルマの画像を撮影。その撮影では、案内に沿って6方向から撮影することになっている。
算出結果
すると、30秒ほどで、修理金額や買取金額、さらに「修理して乗り続けるか」または「売却して乗り換えるか」の最適な対処方法を提案してくれるのだ。さらにそのままカーテンダーに依頼もできるという。全国に100店舗のネットワークを築いており、そこで見積もりに合わせた料金で修理などを行ってくれる。「確かな技術とコストパフォーマンスの良い修理サービスが受けられる」と加藤上席執行役員。
タウは世界最大のリサイクル商社を目指し、損害車ビジネスで培ったノウハウを活用して、損害車のみならず、日本で不要となったプレジャーボートやフォークリフト、建設機械、トラックなどにも取り扱いの幅を広げ、世界規模で必要な人に商品を届けている。
現在、このような循環型ビジネスをフィリピンやマレーシアでも水平展開し、今後は台湾ベトナム、インドネシア、インドなどにも広げていく。さらには今年7月には自動車解体事業にも参入する計画だ。タウのリユース・リサイクルの取り組みはさらに加速していくことになりそうだ。