日本損害保険協会(以下、損保協会)は、複数の保険会社および共済組合から収集した保険金請求等に関する情報をAIで分析し、不正請求を早期検知するシステムを構築し、4月から運用を開始した。
複数の保険会社・共済組合を横断するビックデータを活用したシステムの構築は、日本の金融業界初の取り組みとなる。
損保協会では、従来から不正請求防止を目的として、保険金請求歴や不正請求防止に関する情報を各社間で交換。2018年10月には、保険金請求歴の情報交換の対象種目を全保険種目に拡大したほか、情報交換を行うデータ項目を拡充した「保険金請求歴および不正請求防止に関する情報交換制度」のシステムを構築している。
そして今回、日本テラデータの協力の下、これまでの保険金請求に関する情報交換の機能に加え、不正請求疑義の自動検知機能と保険金詐欺グループの相関図を作成する機能をシステムに搭載。AIを用いたビックデータの活用と、保険会社によって培われた不正請求検知ノウハウを組み合わせ、不正請求防止態勢を強化した。
損保協会は、今後も引き続き、公平・公正な損害額算定および適正な保険金支払いの実現に向けて取り組んでいくとしている。
[構築したシステムの概要]
1.不正請求疑義の自動検知機能
制度参加会社26社から収集した保険金請求等に関する情報をAIで分析し、独自の不正請求疑義を検知するアルゴリズムを作成して、疑義の自動検知機能を搭載。
この機能により、制度参加会社で受け付けた保険金請求等の情報を不正請求疑義検知のアルゴリズムと突き合わせ、不正請求疑義の早期検知ができる。
2.保険金詐欺グループの相関図作成機能
不正請求事案のうち、複数人で結託し、集団で保険金詐欺を行う事例は少なくないことから、不正請求疑義事案に関与した人物や法人等の関係性を可視化できる機能を搭載。
この機能により、システムに入っている関係者情報(人物や法人等)から、当該事案に関連する他の事案や関係者情報をチェックすることができ、これまでに検知できなかった組織的な不正保険金詐欺グループを視覚的に捉えられる。
■(日本損害保険協会)保険金請求歴および不正請求防止に関する情報交換制度を開始(2018年10月9日付リリース):https://www.sonpo.or.jp/news/release/2018/1810_01.html