タイヤを中心に、サービス&ソリューション分野を強化
日本ミシュランタイヤ(本社・東京都新宿区)は4月1日付で須藤元(49歳)氏が新社長に就任した。これを踏まえ、4月13日新社長就任オンライン報告会を開き、須藤新社長はタイヤを中心にサービス&ソリューション分野を拡充するなど「イノベーションのフロンティアになる」と意気込みを述べた。(佃モビリティ総研・松下 次男)
報告会には、ポール・ペリニオ前社長も参加。ペリニオ氏は社長時代の5年半を含め、18年近く日本に滞在、今回の異動で東アジア・オセアニア地域(中国を除く)のB2C責任者としてタイに赴任する。
新社長に就任した須藤氏は直需タイヤの領域が長く、昨年7月まではミシュラン中国の直需セールス部門に滞在した。
社長就任当たって感じていることは「私たちを取り巻く環境が大転換期を迎えている」と強調。このため、日本ミシュランタイヤも「変革への取り組みを加速しなければならない」と述べる。
そこで、まず活動のベースにミシュランの世界観およびグローバルで取り組みビジネス展開を掲げ、サステナブルな未来を描く。
ミシュランガイドなどのエクスペリエンス、ハイテク・マテリアル分野を拡大
ミシュランは「People(人)-Planet(地球)-Profit(利益)」という世界観を持つ。これは、人や環境に貢献することで、利益が生まれ、会社を存続させて、さらに社会に貢献していくという考え方だ。須藤新社長はこの世界観を実践するうえで、人の領域では「人への尊重」をミッションに掲げて、ユーザーに喜ばれるような「タイヤ、ソリューション、サービスの実現を目指す」とした。
地球の領域では、環境への貢献を掲げ、「2050年までにミシュランタイヤを100%持続可能にすることを宣言」していることを紹介。すでにミシュランタイヤを構成する素材のうち30%はすでに天然素材またはリサイクル素材、持続可能な原材料を使用しているとし、これを約30年で100%まで高めるため、グループが全力で取り組んでいるという。
そして「利益」の持続性では、「人、地球」の取り組みを持続可能にするために、企業の利益は欠かせないとし、「従業員がワクワクして利用者に真に求めるものを提供していけば、自ずと企業利益は高まると信じている」と述べた。
ビジネス展開では、「ウイズ・タイヤ(タイヤと共に)」、「アラウンド・タイヤ(タイヤ関連で)」「ビヨンド・タイヤ(タイヤを超越して)」をグローバルで進めているとし、ウイズ・タイヤでは「サステナブルで付加価値の高いタイヤ」の考えを打ち出す。
日本では「ブランドの認知度を向上」を課題に掲げる
アラウンド・タイヤの領域では、フリートソリューションや循環型ソリューションに力を入れるほか、ミシュランガイドに関連した事業展開拡充を示した。一例として、ガイドに掲載店舗との物流ソリューションなどに取り組んでいるとした。
ビヨンド・タイヤの領域では、3Dメタルプリンティングやハイテク素材などの拡充を掲げた。3Dメタルプリンティングでは、複雑な形状のタイヤ用金型を成形しているが、これを広く応用する考えなどを示す。この3Dメタルプリンティングは太田市などで開発を進める。
タイヤ産業を取り巻く環境が大きく転換期を迎えるなか、ミシュランのビジネスもタイヤを中心に、IoT(モノのインターネット)を活用したトラック・バス用タイヤ管理ステムTPMS(タイヤプレッシャーモニタリングシステム)などのサービス&ソリューションを拡充。
さらにミシュランガイドを絡めたエクスペリエンス、ハイテク・マテリアル分野などの新たな領域へもチャレンジする。こうした活動はグローバルで「ほぼ変わらない」(ペリニオ氏)としながらも、須藤新社長は日本では「ミシュランガイドは知られていても、現状、タイヤの認知度が低い」と述べ、タイヤブランドの認知度向上を課題に掲げた。
須藤元(すどう・げん)社長の略歴
1971年6月生まれ。室蘭工業大卒。1999年3月日本ミシュランタイヤ入社。2002年10月中国ミシュランタイヤ、直需タイヤセールスマネージャー、2008年日本へ帰任、直需タイヤビジネスビジネスアナリスト、2016年中国ミシュランタイヤへ赴任、副総監、2020年日本ミシュランタイヤ、B2C事業部専務執行役員。趣味・ゴルフ。