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2024年12月19日【アフター市場】

日本精機、簡単後付け搭載のヘッドアップディスプレイを製品化

松下次男

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ヘッドアップディスプレイの認知度を高めることで普及・拡大へと繋げる狙い

 

車載計器などを手掛ける大手自動車部品メーカーの日本精機(本社:新潟県長岡市)は12月18日、東京都内で後付けヘッドアップディスプレイ(HUD)の新製品発表会を開いた。

 

 

新製品は「LumieHUD(ルミエハッド)の製品名で、2025年2月下旬に発売する。価格は2万2000円(税込み)で、公式ECサイトやカー用品店などで販売する。また来たる1月に千葉・幕張メッセで開幕するオートサロン2025でも披露するという。

 

新製品発表会に登壇した佐藤浩一社長はHUDについて「交通事故防止に役立つ」としながらも、「残念ながら、普及が進んでいない」と指摘し、今回の後付けHUDの投入を通じて認識度を高めるのが狙いとアピールした。

 

日本精機社長の佐藤浩一氏

 

このため、新製品は従来のユーザー層に加え、小型・軽自動車を運転するダライバー、とくに女性層をターゲットにHUDの普及、拡大を目指す。これにより、「HUDに関心の薄かった層にも安心してドライブを楽しんでいただきたい」と訴えた。

 

後付けHUDは、新たにBtoCブランドの「moado」の第一弾として市販化

 

投入する後付けHUDの新商品は、幅121ミリ、奥行き111ミリ、高さ113ミリのコンパクトサイズで、女性ユーザーを意識した丸みを帯びたデザインを採用している。

 

光学構造は表示器から出た光が、補正鏡と呼ぶ凸面鏡で1回だけ反射させてコンバイナと呼ぶ透明な部品上に精緻な虚像を投映するもの。光学系を専用設計としたことで、小型軽量でも虚像の位置を、運転者の視点から1500ミリの前行方向へ鮮明に投映できるのが大きな強みだ。

 

また、BtoC商品の新ブランド「moado(もあど)」ラインの第一弾となる今回の製品は女性など関心の薄かったユーザー層への普及や認識度を高める狙いから、表示機能は車速のみにあえて限定。専業メーカーならではの高性能な光学構造を採用しつつ低価格で発売することにしたという。速度検知はGNSS受信で行い、明るさは5段階の設定が可能だ。

 

日本精機の太田プロジェクトマネージャー

 

今回の製品は前景を見ている時でも、フロントウインドウ上で鮮明な像を結び、すぐピントがあうのが特色。さらに独自技術で、時速50キロ弱までの表示距離差が創出できるとし、この技術が同社の強みと胸を張った。

 

ちなみにクルマのフロントウィンドウに車速や警告、ナビゲーションなどを表示する世界の自動車用HUD市場は、2020年から2030年間に約1300億円から約3500億円規模にまで成長すると予測されている。その予測期間中の成長率は、約260%の高い成長が予想されている。

 

こうした中で、日本精機は早くから自動車メーカー向けHUDのOEM(相手先ブランド)供給製品を手掛け、米GM(ゼネラルモーターズ)や独BMWなどの高級車向けに製品を供給する。世界シェアも30%とトップクラスだ。

 

 

前方に視野を置くことの優位性をアピール、事故発生を未然に防ぐ製品

 

しかし、自動車全体へのHUD普及率はまだ低く、とくに日本市場では採用が広がっていない。同社の製品もOEM向けはマツダのCX-60搭載用などごく一部の車種にとどまり、主力納入先のホンダ向けも海外市場の高級車が主体だ。

 

実際、日本国内のHUDの認知度はまだまだ低く、同社の調査によれば、Cセグメント以上の車両のユーザーは7割近くが認知しているものの、Aセグメント、Bセグメントのユーザーは50~60%強が認知していなかった。また、男女別でみても、男性は7割近い認知度だったのに対し、女性は70%が知らなかった。

 

 

一方で、HUDは交通事故防止に役立つ製品とし、佐藤社長は時速60キロで走行している前の車が減速するのに気づく時間が「速度計だと4・5秒、HUDならば2秒」と気づきの時間が大幅に短縮できると強調した。交通事故防止に役立つ同製品は、BtoC市場だけでなく、HUDの搭載が遅れている小型貨物車両や、法人の営業車などのBtoB領域にも販拡の可能性がありそうだ。

 

さて翻(ひるがえ)って、交通安全に有効なHUDの普及・拡大を目指す同社であるが、OEM領域での市場拡大は自動車メーカーなどの判断に委ねられる。従って今回は、あえてBtoCの製品を手掛けることで、消費者層からのボトムアップ効果でHUDの認知度を高め、製品の普及、拡大につなげるのが今回市販化した狙いでもある。

 

投入する新製品は「前を見たまま、スピードが分かって安心」「小さな車にもピッタリ手のひらサイズ」「USBのみの簡単接続」が特色。まずブルーとグレーのカラーを使った製品を2月下旬に発売し、2025年春にアイボリーカラーの製品を追加する。佐藤社長は引き続き機能を増やした製品を「シリーズ化したい」と述べたほか、さらに小型化した製品の開発などを進めていく考えを示した。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。