国土交通省は、自動車の電子制御装置の機能確認の手法を確立するため、車載式故障診断装置(OBD:On-board diagnostics)を用いた自動車検査手法について、平成29年12月から検討、その中間報告を5月11日に公表した。
国交省は、近年急速に普及が進む、自動ブレーキや自動車線維持機能等の自動運転技術を搭載した自動車の使用過程時における適切な機能維持を図るため、自動車の電子制御装置まで踏み込んだ機能確認の手法を確立することが必要だと主張している。
この主張に基づき、自動車に搭載されるセンサ等の構成部品の異常を自己診断し記録する装置(車載式故障診断装置(OBD))を活用した自動車検査手法の導入について検討するため、平成29年12月に「車載式故障診断装置を活用した自動車検査手法のあり方検討会」を設置し、5回にわたって議論を進めてきた。
そして今回、これまでの議論を踏まえ、中間とりまとめを公表。報告書では、OBDを活用した検査開始時期について、2024年と定めている(※)。
また今後、中間とりまとめに示された方向性に従い専門家ワーキングを設置し、OBDを活用した検査手法の詳細について議論を行うとしている。
※:検査開始時期は実証実験等を踏まえて変更があり得る。
[中間とりまとめの概要]
○近年、自動ブレーキなど自動運転技術の進化・普及が急速に進展(※1)しているが、故障した場合には、誤作動による重大事故等につながるおそれがある(※2)ことから、自動車の検査等を通じた機能確認が必要。
○ 現在の自動車の検査(車検)は、外観や測定器を使用した機能確認により行われているが、自動運転技術等に用いられる電子装置の機能確認には対応していない(※3)。
※1:自動ブレーキ、自動車間距離制御(ACC)の新車(乗用車)搭載率
※2:電子装置の不具合事例
・ACCを使用して高速道路を走行中、突然機能が停止し、強い回生ブレーキが作動→前方監視用のカメラが偏心していた。
・上り坂を走行中、自動でブレーキが誤作動し、急減速した。→自動ブレーキのレーダセンサの取付角度が設計値より下向きになっていた。
⇒現在の車検では検出できない不具合
※3:諸外国の状況
○EU
・加盟国に対して電子装置を含めた検査実施を推奨(EU指令 2014/45EU)
・ドイツでは2015年よりOBDを用いた検査を開始、段階的に拡大中。
○米国
・33の州・地区においてOBDを活用した排出ガス検査を実施中
<車載式故障診断装置(OBD)を活用した自動車検査手法>
○ OBDとは
「車載式故障診断装置(OBD:On-Board Diagnostics)」は、電子装置の状態を監視し、故障を記録する装置で、記録された故障コード(DTC)は、スキャンツールを接続し読取を行う。
○ OBDを活用した自動車検査手法
自動車メーカーは、保安基準不適合となる故障コード(特定DTC)を提出。検査に使用するスキャンツール(法定スキャンツール)に「特定DTC」情報を格納。車検時に、法定スキャンツールを接続し「特定DTC」 が検出された場合に検査不合格とする。
○ 対象車両・装置及び検査開始時期
●対象 ※1
2021年以降の新型の乗用車、バス、トラック
①運転支援装置 ※2
アンチロックブレーキシステム(ABS)、横滑り防止装置(ESC)、ブレーキアシスト、自動ブレーキ、車両接近通報
②自動運転機能 ※2
自動車線維持、自動駐車、自動車線変更など
③排ガス関係装置
●検査開始時期
2024年 ※3
※1 認証を受けた自動車に限る。
※2 保安基準に規定があるものに限る。
※3 検査開始時期は実証実験等を踏まえて変更があり得る。
■中間とりまとめ本文(PDF形式)PDF形式:
http://www.mlit.go.jp/common/001234144.pdf
■委員名簿(PDF):
http://www.mlit.go.jp/common/001234176.pdf
■(国土交通省)「車載式故障診断装置を活用した自動車検査手法のあり方検討会」HP:
http://www.mlit.go.jp/jidosha/OBD_Inspection_System.html
※第5回検討会までの配付資料及び議事概要を掲載