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2024年6月13日【IoT】

メイ・モビリティ、ミシガンで14回目の自動運転実証へ

坂上 賢治

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サービス実証プログラム「Accessibili-D」の始動へ

 

メイ・モビリティ( May Mobility )〟は6月12日( ミシガン州アナーバー発 )、米・デトロイト市に於いて、Office of Mobility Innovation at The City of Detroitこと〝OMI( デトロイト・モビリティ・イノベーション局 )〟らと共同で、自動運転車によるサービス運行を行う約2年間の実証プログラムの「Accessibili-D( アクセシビリティD )」を始動させる。

 

 

より具体的には、米ミシガン大の自動運転開発メンバー達によって2017年に設立したAV( Autonomous Vehicle / 自動運転車 )技術ベンチャーのメイ・モビリティが、先のOMIに加えて、ミシガン州内での高齢者や障害者向けに、自動運転モビリティの広域展開を計画している官民パートナーシップの〝ミシガンモビリティコラボレーティブ( MMC/Michigan Mobility Collaborative )〟と提携。デトロイト市域内で自動運転( ADS/Autonomous Driving )実証を開始することを明らかにした。

 

この〝アクセシビリティDサービス〟とは、身体等に障害を持っているか、あるいは62歳以上の高齢者を対象に、デトロイト市民の生活の質を向上させることを目的に実証を重ねている様々な活動の一環だ。

 

今回のサービス自体の流れは、強い移動ニーズを持っているにも関わらず、自由な移動が難しい上記対象者がスマートフォンアプリやWebサイト、コール センター等を利用して、事前に自ら移動したい日時などのスケジュールを踏まえて例えば、買い物・医者の予約・社交活動に出向く必要がある場合、オンデマンド機能を備えた自動運転車両( 通称:ADSシャトル )を自宅まで迎えにこさせ、その後、自宅まで送り届けてくれるもの。

 

サービスの提供期間は2024年6月20日から2026年まで

 

このADSシャトルの利用にあたっては、パラ・トランジット利用( 鉄道やバスなどのマス・トランジットと、自家用車などのパーソナル・トランジットの中間サイズ車にあたるデマンドバスや乗合タクシーなどを指す名称 )の資格要件を満たしていないため、それらを利用できないデトロイト市民にも提供される。またサービスそのものの提供期間は、2024年6月20日から2026年まで利用できる。

 

 

この実証活動にあたってメイ・モビリティは、利用資格を持つ対象者が好きな時に医療施設、ショッピング センター、職場、社会活動施設、レクリエーション施設などに出向けるよう、2台の車椅子対応車を含む自動運転車3台を配備する。

 

区域は、デトロイト市ダウンタウンの11平方マイルにある68の停留所で月曜日と、水曜日から金曜日の午前8時から午後6時まで。週末は、午前8時から午後1時までの時間帯で運行される。

 

提供サービスに関心を持った対象者は、まずは利用フォームを提出・登録する必要がある。登録後はVia Transportation Inc.が提供する「Accessibili-Dアプリ」を利用するか、専用のコールナンバーに電話して乗車予約をするだけでADSシャトルがやってくる。

 

 

そんなメイ・モビリティの自動運転車両( ADSシャトル )は、マルチポリシーを介した意思決定を繰り返して行う( MPDM / Multi-Policy Decision Making / 自動運転意思決定AI )技術を駆使して市街地を効率的に走行する。

 

人工知能のMPDMがその場で最適な分析経てより良い判断を下す

 

車両には複数のLiDAR、レーダー、カメラなどの複数センサーを搭載しており、運行中は周囲360度の映像情報が常にリアルタイムでMPDMへ送信される。MPDMは1秒毎に何千通りものシナリオを仮想的にシミュレート。

 

例えば、運行中のADSシャトルの周囲に於いて、車両、歩行者、自転車、ペットを検出するとMPDMは、予期しない状況でも効率的かつ安全に目的地に到着するべく、その場、その場の最適な分析から、より良い判断を下す仕組みだ。

 

なおミシガン州デトロイトに於ける自動運転システムの運行は、メイ・モビリティ社にとって14 回目の実証機会となる。ちなみに同社は現在、ミシガン州アナーバー、ミネソタ州グランドラピッズ、フロリダ州マイアミ、テキサス州アーリントン、アリゾナ州サンシティでも同様の事業展開を行っている。

 

 

そうしたなかで、今実証サービスの開始についてメイ・モビリティのエドウィン・オルソンCEO兼共同創設者は、「デトロイト市では、自動車の所有に掛かる税や費用負担が高く、それゆえ何らかの障害をお持ちの方々が移動の難しさを抱えており、移動に困窮している市民が沢山おられます。

 

そうしたなかで昨年7月、デトロイト市議会は〝アクセシビリティDサービス〟を市民の皆様へ提供するべく、メイ・モビリティとの240万ドルの運行契約を全会一致で承認して頂きました。

 

今後、時間を掛けてサービスの提供区域を更に拡大させいく

 

これによりOMIとMMCとメイ・モビリティの3者は、市民の皆様へ自動運転車のメリットをお示ししつつ、利用頂く皆様からのフィードバックを検討。今後は、数か月程度の時間を掛けて車両と停留所などを追加整備し、サービスの提供区域を拡大させいく予定です。

 

当社は過去の活動を踏まえ、今回は、より広域でのサービス展開を行いつつ、我々の自動運転技術がデトロイト市内の様々な場面と機会に於いて、お役に立つ事例をお示しできることを心より嬉しく思います」と述べた。

 

 

またデトロイト市モビリティイノベーションオフィスでチーフを務めるティム・スラッサー氏は、「私たちは、高齢者や障害をお持ちの方々が、移動を愉しんで頂けるべく〝アクセシビリティDサービス〟を開始・展開できることをとても嬉しく思います。

 

この革新的なサービスは、市内で移動の困難さを抱える市民に対して、安全で効率的な交通手段を提供。皆様の生活水準をより便利に、より充実したライフスタイルを愉しんで頂けるよう、移動サービスへのアクセスを大幅に改善する試みとなります。

 

デトロイト市は、MMC並びにメイ・モビリティとのパートナーシップに感謝を示しつつも互いの力を合わせ、全ての市民を暖かく包み込む都市づくりを目指していきます」と語っている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。