6月20日に都内で行われた記者発表会では、既に導入済みの自治体・一般社団法人・民間企業も登壇した。写真は左から、一般社団法人美瑛町観光協会 丘の町びえいDMO 細谷侯仁氏、ホット沖縄総合研究所 取締役 事業開発部 部長 兼 株式会社カヌチャベイリゾート 経営戦略室 白石亮博氏、Luupの岡井大輝 代表取締役社長兼CEO、栃木県芳賀町 大関一雄町長、西武ホールディングス 経営企画本部 西武ラボ 部長 田中健司氏
電動モビリティーのシェアリングサービスを担うLuup( ループ )は6月20日、これまで、おおむね都市部のインフラ作りに力点を置いていた事業展開から大きく舵を切る。これにより同社の事業は、新たな第二次フェーズに入ったと言えるだろう。( 坂上 賢治 )
その内容は、都市部に於けるシェアリング網の拡充を行う一方で、地方自治体・企業・団体向けの新たな電動モビリティーシェアリング導入支援事業「LUUP for Community」を稼働させるというもの。
つまり地方の自治体・企業・団体が、「LUUP for Community」と契約( 導入費用の一部を負担 )することにより、LUUPブランドのシェアリングポートの運営主体となって、電動マイクロモビリティーの貸出を行えるようになる。
これにより、町や村のコミュニティー内、地域施設、観光スポット、ホテル等が自らLUUPによる自由な移動体験をステークホルダーへ提供。移動の利便性を提供することで更なる集客拡大や送客機会の創出に役立てられる。
かねてより同社の岡井大輝CEOは、電動キックボードや電動アシスト自転車を活用した訪問介護勤務のサポート施策を打ち出すなど、元々Luupとして本当に展開したかった地域サービスへの貢献を視野とした新たな動きを見せていた。
今となって振り返ると、その際( 先の3月25日(の関連記事リンク) )に岡井CEOは、「創業当初、数十年後の日本の課題解決に繋がるインフラを作りたいという想いから、介護士やその資格を持つ方々へ、当社のシェアスポットを介してサポートを行うCtoC事業を構想していました。
(中略)当社サービスは、まだまだ道半ばであり今回、訪問介護事業者様に、我々のサービスの可能性を見出して頂けたことは感慨深く身が引き締まる思いです」と語っていたが、どうやらLuupは、本来行いたかった、世の中に等しく「移動の自由を提供する」という自社事業の核心に遂に取り組む考えのようだ。
今回の会見では、主に都市圏で積極展開してきた貸出拠点の拡大と同様な措置を地方向けサービスでも強力に展開する。とは言っても、やみくもにまだら模様な事業展開を行うのではなく、主に地方自治体やホテル、観光施設に向けてシェアリングポートの導入を提案していくと言う。
そもそも地方での事業展開に関しては、運転者不足に伴い都市部よりも深刻なバス路線の統廃合やタクシー自体の減少。また訪日観光客数の拡大で移動の足が圧倒的に不足している現実があり、地方に於ける事業拡大は、求められる場所にシェアリングポートを置きたいLuupにとっても欠くことのできない施策ではあった。
それゆえLuupでも、一部地域でのサービス実証自体は積極的に行ってきており、今日の新事業発表時点で、地方自治体では栃木県芳賀町など、企業でも西武ホールディングスなどを筆頭に13の法人が既に正式導入を決めている。
しかし今後の事業拡大に際しては、地方営業への過大な利益を当て込んで、あえて営業部門を拡大するということは一切行わない。というのは営業組織への投下コストを拡大することは、例えばサービスを受けて貰える自治体に対して、事業コストの増加分を担って貰うことになりかねないととしており、それは絶対避けたいからだと言う。
現時点では、月あたり数十件規模の問い合わせが貰えている状況であるので、今は運用コストを限界まで下げて、日常に於ける使い易さを優先したいとしており、地方に於けるシェアリングサービス拡充については、あくまで地域の交通手段に悩むエンドユーザーに向けて、便利に使って貰えることを目指すようだ。
従って対象となった法人( 自治体や企業 )は、電動キックボードや電動アシスト自転車の菓貸出拠点( シェアリングポート )を月額制で導入できる。月額料金の具体額は各々と協議の上、柔軟な使い方ができるよう検討・対応していく。
つまり1カ月単位での短期導入も可能であるし、年末年始や夏期、観光のハイシーズンに向けて貸出内容を拡大したり、ケースによっては特定期間に限り、一時縮小や一時停止も行えることにも応えていくとしている。
個々の利用料金も調整できるとしており、例えば自法人の従業員や特定地域の住人には低額で提供し、一方で観光客には高額でのモビリティー貸出も行えるようにするとした。
対して導入する地方自治体等では、現在、Luupが主力に据えている電動キックボードを若年層の移動手段として促したり、もうひとつの電動アシスト自転車タイプは、ファミリーユーザー向けに提案。
更に免許返納などで移動の自由に困窮している高齢者へは別途、LUUPなどのサービス拡充で使う筈だった予算を振り向けて独自の施策を打ち出し、タクシーの利用チケットや、小型の周遊型コミュニティバス、グリーンスローモビリティなどの新たな展開を行えば良い訳だ。
自治体として、これら移動に係る提供手段を複数持つということは、想定外の課題が出てくる可能性もあるが、その一方で観光人口の拡大や、地元の足としての定着が望め、低コストで住民サービスの拡充を図ることができる利点もある。
なお、LUUPのシェアリングポートを実利用する個々のユーザーサポートに関しては、アプリ内での交通ルールテストの実施、年齢確認書類の提出や注意喚起の実施、ヘルメット着用、保険加入、事故発生時の対応、車両の定期メンテナンスや修理などの一連の展開を、現在のシェアリングサービスの「LUUP」と同じくLuupのカスタマーセンターにて対応する。
最後に貸出車両については、先の通り現時点で都市部で展開している電動キックボードと電動アシスト自転車を提供する。但しLuupとしては、地方で使って貰える対象者を考慮。いずれは高齢者などの利用拡大を視野に3~4輪型のモビリティーも投入していきたい意向だ。
新型モビリティに係る暫定コンセプトモデルの一案(現時点では開発・投入時期等は全くの未定)
この新たなタイプのモビリティ投入の着想は、同社の狙い通り、高齢者を含む地域社会へマイクロモビリティサービスを浸透させるための突破口になる可能性がある。
それゆえ利用者側としては早期の導入に期待したいところだ。但し、具体的な投入時期は車両開発に係る期間も必要であるため、原時点で投入時期を公式に発表できる段階にないとしている。