「ナビヤ アルマ」の定常運行、境町に先駆け羽田イノベーションシティが日本初に
羽田空港の隣接地にオープンした羽田イノベーションシティ(HICity)で日本初の自律走行バスの定常運行が9月18日からスタートした。定員11人の自律走行バス「ナビヤ アルマ(NAVYA ARMA)」が各日2時間ずつ2回施設内を循環し、施設で働く人や来訪者の施設構内の移動向上に役立てる。将来的には施設外とも結ぶ。(佃モビリティ総研・松下次男)
運行はHICityの事業主体でもある羽田みらい開発を主体に、鹿島建設や実証実験を主導してきたBOLDLY(ボードリー、旧SBドライブ)、マクニカ、日本交通が協力する。
定常走行に先立って開いた出発式で羽田みらい開発の山口皓章社長は、自律走行バスの定常運行スタートに当たり「新しいイノベーションを引き起こす種になってほしい」と期待感を示した。
7月3日に開業したHICity(第1期事業)は先端事業と文化事業を融合して新しいイノベーションを起こすことをコンセプトに、羽田空港跡地に建設が進められているもの。施設内には先端モビリティセンターや体験型商業施設などがあり、さらに2022年には研究開発拠点、先端医療研究センター、アート&テクノロジーセンターも揃う。
また、最先端のスマートモビリティやロボットを実装し、近未来を体験できる日本のスマートシティのモデルケースを目指す取り組みも始まっている。
定常運行を開始したナビヤ アルマはフラン・NAVYA(ナビヤ)社製の車両を採用。各日10時30分~13時30分、14時30分~16時30分の時間帯、無料の循環バスとして運行する。
協力する鹿島建設は、羽田みらい開発の代表企業であり、自律走行バスの運行では空間情報データ連携基盤を提供。同社の塚口孝彦執行役員は鹿島建設について「ゼネコンからスマートシティへと取り組みを広げている」と述べ、その知見を提供する考えを示した。
羽田みらい開発、鹿島建設、ボードリー、マクニカ、日本交通が協力し技術革新を実践
各地で自律走行の実証実験を手掛けるボードリーは今年4月に社名を変更。同社の佐治友基社長兼CEOはソフトバンクを主体とする資本構成は変わっていないが、自動走行の実用化が目前に迫ってきたことから「輪を広げ、広く英知を結集する」狙いを新社名に込めたと述べた。
同社が関わる自律走行バスの実証実験はすでに50回を超え、定常運行への移行についてもHICity内に続き、来月には茨城県境町で実現する見通し。同町での運行は当初の計画よりやや遅れたが、公道を含めた域内バスの運行として注目されている。車両も今回と同じナビヤ社製を採用する。
マクニカはナビヤ社の国内総代理店で、輸入販売のほか定期的に車両の安全性を確認するなどメンテナンスを担う。同社はもともと半導体やセキュリティなどの革新テクノロジーを手掛けてきた会社でもあり、近年は自動運転テクノロジー分野にも力を入れている。
日本交通は安全運行面の実務をサポートする。自律走行バスは当面、乗務員を必要とするため、第2種免許を保持するハイヤー乗務員を乗車させて安全性を支援する。また、自動運転車両運行プラットフォームを通じて安全運行を管理するとともに、業務でも知見を活かしたいとしていた。
今回HICity構内で定常運行を開始した自律走行バスだが、すでに構内では実証実験を繰り返してきた。また、構想も施設建設の前から進められており、構内道路や建物も自律走行に合わせて配置になっているという。
と同時に、山口社長は佐治社長などと進めてきたプロジェクトに自身も刺激を受けたとし、実際に運行が始まることで「ここに働く人や来訪者にイノベーティブな刺激を与えることを期待している」と述べた。
自律走行バスのナビヤ アルマは低速走行でフランス内の実証実験でも安全性は実証済み。ただし、日本とは走行や法規で異なる部分もあり、日本の実態に合わせて改良を施している。
車両デザインには施設のコンセプトである先端産業の「青」と文化産業の「赤紫」の融合をイメージしたカラーが採用されている。