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2024年9月4日【MaaS】

イブニオン、EVの総合ポータルサイトを立ち上げ

坂上 賢治

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EV周辺産業を包括したオンラインマーケット「EVNION PLACE」

 

三菱商事、三菱自動車、三菱ふそうトラック・バスの3社が共同出資して設立したEV( 電気自動車 )に係る総合サービス事業「EVNION( イブニオン / 窪田憲太社長 )」は 9月4日、「EVを取り巻く全てのモノやヒト、コトを繋ぐ」を社是に掲げて電気自動車( EV )の導入や運用を支援する事業を来たる10月1日から始動させると発表した。( 坂上 賢治 )

 

その第一歩として同日、東京都港区内に報道陣を募って当該事業のサービスプラットフォームとしての「EVNION PLACE( イブニオン プレイス )」の概要を公表し、具体的なサービス開始時期を2024年10月1日からに据えたことなどを明らかにした。

 

 

ちなみにこの「イブニオンプレイス」とは、イブニオンのEV+UNION( 団結・繋がり )を体現する情報発信するサイトとして、同社が考える理想の姿を示したもの。

 

それは特定の乗用車・商用車メーカー、あるいは周辺製品の提供メーカーを問わず、EV周辺産業を一括りにしたオンラインマーケットプレイス( EVに係る充電器設備、外部給電設備、設置作業を担う事業社、EVに最適化した電力プランを提供する企業、関連アクセサリーの提案会社などを紹介する媒介サイト )としての役割を担える唯一無二の存在を目指すことだという。

 

 

立ち上がり当初は20~30事業者が同サイトに参画する見込み

 

より具体的には、コンフィギュレーター( サイト訪問者に対して、希望に適した製品群を収集するための手助けプログラム )機能の他、脱酸素コンシェルジュとして( 顧客の疑問や隠れた悩みを汲み取り、期待を超える製品も提案する )の役割を演じて、同サイトへの参画を決めたサービスプロバイダー( 充電器メーカー、充電に関わる設備メーカー、電力の供給会社、太陽光パネル設置事業者など )と、個人並びに法人の顧客間を仲介する「よろず相談」に応える役割になることを指す。

 

同EVNION PLACEは、立ち上がり当初に於いて20~30事業者が参画する見込み。その際の事業モデルは、参画事業者に顧客を紹介し対価を得る形となる。

 

 

またEVNION PLACEに参画するサービスプロバイダーは、やみくもに広く参画企業を募る格好ではなく、自社に於いて信頼に足る事業者を診査・厳選していくと述べている。従ってイブニオンプレイスを介して商品やサービスを受けるユーザーは、同サイトを介したサービスの提供品質に関して一定以上のクオリティが担保される。

 

つまるところイブニオンプレイスは、EVを購入した際に、利用・運用する際に絶対必要な周辺サービス。例えば現段階で選択肢が限られる充電器や充電器設備、外部給電設備、それらの設置業社、電力プランなどの様々なサービスや情報をワンストップで提供できるようにするというもの。

 

またその姿勢は、事業者向けの情報も扱うが、個人オーナーも包括した幅広いユーザーニーズに応える仕様とする。

 

 

但しそれだけでは現段階に於いて、部分的に競合する事業者は既に多数存在しており、また現・発表段階のコンテンツだけでは、イブニオンとしての独自性を充分に活かしていける筈はなく、将来的には、オンラインプラットフォームから得られたデータを活用し、独自のソリューションサービスの提供も検討していきたいとしている。

 

EVNION PLACEのサイト概要を解説したEVNION取締役の五島賢司氏

 

いずれは独自のソリューションサービスが揃う大規模サイトに

 

ちなみに会見当日にイブニオンは、実際の提供予定のサービスサイトを開き、どのようなコンテンツが提供されるかを説明した。そのコンテンツ内容は、比較的多岐に亘っており「そもそもEVとは?」を解説するページも用意される。

 

それ以降は、EVの運用方法、性能に係る解説、EVを導入することで得られるメリットについてなどが語られたり、EV導入時の個人オーナーの自宅環境や、法人向けの導入環境の説明、設備や電力プランなどが詳しく説明されている。

 

けれども現段階に於いては、EVの車種紹介や性能比較、車両購入に係るコンテンツは存在しない。そうした内容については今後の事業上の検討要素であるとしている。

 

EVNION代表取締役社長の窪田賢太氏

 

イブニオン代表取締役社長 兼 最高経営責任者の窪田賢太氏は、「国内産業領域に於いて、脱炭素に向かう流れは不可逆的だ。そうしたなかでEV導入に踏み切れないユーザーや法人を後押しすることで自動車産業界でのEV普及に貢献していきたい。

 

それゆえイブニオンプレイスは、あくまでも独立したオープンプラットフォームとして運営する。ただEV業界を取り巻く産業の成長も、我々イブニオンの事業についても、まだ緒に就いたばかりであるため、現段階で今後のコンテンツ拡充については発展途上にある。

 

まずは既にEV購入を検討、また購入・導入を決めている個人や事業者が、手始めに情報収集できる大規模マーケットプレイスとしての立場を確立させた上で、追ってコンテンツを拡充・発展させていきたい」と述べた。

 

出資3社の強みを束ねられる事業体制と強みを活かすべき

 

さて、イブニオンという企業は冒頭通り、先の3月13日に三菱商事が35%、三菱ふそうが35%、三菱自動車工業が30%出資して設立された新会社である。

 

そのため、具体的な事業概要が明らかにされていなかった今年3月段階では、三菱ふそう、三菱自動車工業両社の電動車戦略を背景に、その成長を加速化させるべく、三菱商事の強みを活かして両社を強力にサポートしていく役割を果たす可能性も有り得るとの見方もあった。

 

しかし実際に蓋を開けてみると、むしろ3社の出資色を極力出さずに電気自動車を取り巻く様々な事業領域から、広くサービスコンテンツを募る総合ポータルとなっていく道筋を示した。

 

なるほど確かに日本国内に於いて、EV産業を横断的に仲介する総合プラットフォームは存在しなかった。そうした意味でEV導入に係る総合ポータルサイトの立ち上げは、EV導入に悩む個人・法人ユーザーに福音となる可能性はありそうだ。

 

但し、どのような産業でも、その成長過程は、放物線のような幾つかの山を上り下りしながら、総体的には右肩上がりの成長を辿っていくもの。そういう意味で日本国内のEV産業も、これから最初の山の高みを目指して拡大していく段階に入る。

 

それは裏を返すと今後、ライバルサイトも早晩登場することを意味する。ゆえに本社機能を三菱ふそうトラック・バスの本社・川崎製作所敷地内に置き、出資3社の強みを束ねられるという強みを内包しているイブニオンプレイスに対し筆者は未来を切り拓く戦略づくりに於いて、今後、大きな飛躍を示す時期が到来するのでと期待を賭けている。

 

 

イブニオン株式会社の概要
社名:イブニオン株式会社 (英語表記: EVNION Inc.)
設立:2024年6月6日
事業開始 2024年 10月1日 (予定)
本社:神奈川県川崎市中原区大倉町10番地
代表者:窪田賢太
株主:三菱商事株式会社、 三菱ふそうトラック・バス株式会社、 三菱自動車工業株式会社
事業内容:EV総合サービスプラットフォームの運営

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。