住友ゴム工業は3月8日、記者会見を行い、タイヤ事業で循環型経済の実現を目指すためのサーキュラーエコノミー構想である「TOWANOWA(トワノワ)」構想を策定したと発表した。この名称は、地球環境とモビリティ社会に永遠(TOWA)の輪(WA)を生み出し、持続可能な未来の実現に貢献したいという意味が込められているそうだ。この構想を打ち出すことにより、今まで以上に事業運営を通じた持続的な社会の発展と企業の成長を目指すということだが、その「TOWANOWA」構想の中身とはどんなものなのか。(経済ジャーナリスト・山田清志)
独自のセンシング技術を活用して資源の循環を
「現在、企業が事業活動を行ううえで気候変動の影響拡大を背景としたカーボンニュートラルへの急速なシフト、人口増加や経済成長に伴う資源需要の高まりから、世界的にサーキュラーエコノミーの実現が急務となっている。さらに、CASEやMaaSの発展により、自動車業界としても変革を求められている。こうした環境の中、当社はESG経営を推進してきており、環境に関する土地組みの一環として、サーキュラーエコノミーのビジネスモデルを策定した」と山本悟社長は構想を策定した背景を説明する。
今回打ち出されたTOWANOWA構想は、タイヤ事業において効率的なモノの流れと資源の循環を目指す「企画・設計」「材料開発・調達」「生産・物流」「販売・使用」「回収・リサイクル」の5つのプロセスで構成された「サステナブルリング」と、「データリング」で構成されている。
データリングは、バリューチェーン上の各プロセスから収集したビッグデータ、例えば原材料のデータやタイヤの使用データなどを連携させ、シミュレーション技術、AI技術をさらに進化させる取り組みを指す。ビッグデータの収集には、同社独自のセンシング技術である「センシングコア」が活用されるという。
この2つのリングが密接につながり、その間をデータが行き交うことにより、資源の有効活用とCO2の削減に取り組みだけでなく、さらに安全で高性能なタイヤの開発やソリューションサービスの拡充など、顧客へ新たな価値を提供するわけだ。
例えば、摩耗などによる性能低下を抑制する「性能持続技術」、ウエットや凍結などどんな路面状態でも安全に走れるようにゴムの性能が変化する「アクティブトレッド技術」など、「スマートタイヤコンセプト」をさらに進化させ、それにセンシングコア技術により集めたビッグデータを活用することで、サービスの向上と高性能なタイヤ開発を推し進めるのだ。
サステナブル原材料比率を2030年40%に
具体的には、企画・設計でタイヤの軽量化・低燃費化を進めて、2027年にタイヤ重量を20%軽量化、転がり抵抗を30%低減した次世代EVタイヤを発売する。材料・調達では、サステナブル原材料の採用促進や天然ゴム改質による性能向上と生産性改善を行い、リサイクル原料とバイオマス原材料を合わせたサステナブル原材料比率を2030年に40%に引き上げ、2050年には100%にする。
生産・物流では、2030年を目標にタイヤ鮮度管理の効率化、在庫滞留の抑制、物流の効率化などで輸送時CO2を10%削減し、国内モーダルシフト率30%を実現する。また、生産時には水素ボイラーと太陽光発電の自然エネルギーを利用して、製造時のカーボンニュートラルを達成する。2023年1月からすでに白河工場(福島県)でその生産が始まっており、今後その技術を国内外の工場へ展開していく予定だ。
販売・使用では、センシングコアやタイヤ空気圧センサーなどもとに、顧客に対してタイヤの空気圧管理、車輪脱落の予兆検知、摩耗状態の検知といったタイヤ適正管理サービスを提供。さらに顧客の多様なニーズに対応したタイヤや使い方などを提案していく。回収・リサイクルでは、良質なリトレッド台タイヤの回収を進めて複数回のリトレッドを実現していき、寿命を終えたタイヤについてはサステナブル原材料として再利用する。
「TOWANOWAで目指す姿は、限りある資源を循環させて有効活用するとともに、センシング小輪をはじめとした弊社独自のビッグデータ活用によって、お客様に新たな価値を提供することで次世代モビリティ社会をはじめとした持続可能で、安全、安心、快適な社会の実現に貢献することだ」と山本社長は話していた。