アートスパークグループのカンデラと、韓国の総合家電、情報通信メーカーLGエレクトロニクスは11月10日、車載用のヘッドアップディスプレイ(HUD)やセンターインフォメーションディスプレイ(CID)など、様々なディスプレイをサポートする革新的な拡張現実(AR)ソリューションを共同開発したと発表した。
この最新ARソリューションは、コンピューターが生成したビジュアルグラフィックスを、現実世界の風景に重ね合わせることで、先進運転支援システム(ADAS)による警告、ナビゲーションヒント、各種施設情報(POIs)、歩行者検知などの状況に応じた重要な情報を道路上に直接表示する。また、カンデラのHMIソリューションである「CGI Studio」が、ユーザーエクスペリエンス(UX)の向上において、複雑なコーディングを必要とせずに、完全にカスタマイズできるARユーザーインタフェースモデリングを実現した。
現在、道路上の車両の増加に伴い、安全性の向上とドライバーの注意力散漫を軽減する必要性が高まっており、自動車市場におけるHUDとCIDのARソリューションの統合を促進するための重要な要素のひとつとなっている。
これまでHUDは、プレミアムカーのオプションまたは標準装備に留まっていたが、近い将来、プレミアムカーに加え、エコノミーカーなどの標準車にも搭載されると考えられている。現在、世界中の自動車メーカーが、この新しいテクノロジーの可能性とユースケースに関心を高めているところだ。
この認識に基づき、LGエレクトロニクスは、HUDやAVN、CIDなどの様々な車載ディスプレイに対応する最新のARソリューションの開発に注力している。AR-HUDは、従来のHUDの静的な情報表示とは異なり、重要な情報を車線上やドライバーの視界に直接写し込むことが可能となり、さらに一歩進んだものとなっている。これには膨大な量の車両センサーデータの統合が必要だが、AR-HUDは情報やアラートをリアルタイムで投影することが可能だ。
LGエレクトロニクスはこれらの複雑な要件を実現するために、デジタルコンテンツと現実世界の統合を目的とした強力なARエンジンを開発。LGエレクトロニクスのARエンジンは、車載センサーで計測された情報をリアルタイムで統合し、自動車の周辺にあるすべてのオブジェクトの動作を予測する高度なセンサーフュージョンフレームワークに基づいて構築されている。この高度な信号処理フレームワークは、車両の動きに対するARコンテンツの安定化を保証し、ARコンテンツと現実世界との間のシステム遅延によって生じる時間的遅延を低減する。LGエレクトロニクスのARエンジンは、複雑な計算が必要な状況においても十分に最適化されているため、低パフォーマンスのシステムオンチップ(SoC)環境下でも、高いフレームレートを実現する。また、内蔵のモバイルセンサーをARエンジンへの入力として使用することで、AndroidTMの携帯電話などのモバイル機器にも適用できる。
LGエレクトロニクスの強化された可視化技術とARエンジンを組み合わせることで、ナビゲーションヒント(ルートカーペット、方向矢印、ゴールピン、POIハイライト)、ADASアラート(アクティブクルーズコントロール、車線逸脱アラート、前方衝突アラート、歩行者検知)などの直感的なARシーンをサポートする最新のARソリューションが実現した。
現在、LGエレクトロニクス社のARソリューションは、市場に向けて多数の自動車メーカーと量産を進めている。LGエレクトロニクス社のスマートモビリティラボのシニアバイスプレジデントであるSukjin Chang氏は「技術的な準備が整ったことで、お客様により良い価値を提供でき、様々な自動車メーカーとの量産経験が、市場での事業をさらに拡大させると確信しています。」とコメントした。
オーストリアのHMIツールプロバイダーであるカンデラは、既存のHUDを強力なカンデラレンダリングエンジンで強化し、遅延を最小限に抑え、さらに表示情報の明瞭性を向上させた。「ADASアラートや安全警告に関しては、情報を遅延なくリアルタイムで表示することが特に重要です。レンダリングエンジンにさらなるパフォーマンスと遅延の最適化を組み込むことで、高速走行時であっても警告を必要なタイミングで発報し、可視化された目標物をより正確にピンポイントで表示することができます。」と、カンデラのテクニカルセールスマネージャー Roberto Hofer氏は説明している。