2024年はグッドイヤーにとって、2020年にル・マン24時間に復帰して以来、最大の年となる。今年のル・マン24時間でグッドイヤーは、23台のLMGT3マシンと、ヨーロピアン・ル・マン・シリーズやアジアン・ル・マン・シリーズなどで世界を転戦する16台のLMP2マシンにタイヤを提供。この結果、グッドイヤーがタイヤを装着するマシンは昨年の24台から39台に増えた。
その間も含め、ル・マンの上空には5年連続で、今年もグッドイヤー・ブリンプ( 飛行船 )が飛行した。それは詰めかける何十万人ものモータースポーツファンの目を和ませるだけでなく、上空からの迫力あるレース展開の映像も提供するもの。
これまでグッドイヤー・ブリンプは、何十年もの間ヨーロッパ中の主要自動車レース、様々なスポーツイベント、あるいは文化的イベントの常連であり続けてきた。今日、グッドイヤーは2020年を皮切りにル・マン24時間レースへの復帰を遂げて以来、グッドイヤーの空のアイコンは再びサルト・サーキットの風物詩となっている。
歴史を紐解くと、このグッドイヤーの飛行船が初めて登場したのは1910年代の頃、これを機に様々なイベント映像を賑わす存在となっていった。
1950年代、グッドイヤー・ブリンプはテレビ中継に使用され、1955年には、米国の伝統的なローズパレードとカレッジフットボールのローズボウルで、空中カメラのプラットフォームとして初採用。以降、グッドイヤー・ブリンプはスーパーボウルからロイヤルウェディングまで、様々なイベントで活躍している。
現在、3機のグッドイヤー・ブリンプがオハイオ州、フロリダ州、カリフォルニア州それぞれのベース基地から全米の都市へと飛び立ち、毎年約200のイベント開催地の上空を飛行している。
ヨーロッパでは、2020年から4代目のグッドイヤー・ブリンプがデビューを飾り、同ブリンプは、ル・マンやニュルブルクリンクの24時間耐久レースの上空を飛行するだけでなく、ロンドン、コペンハーゲン、ミラノなどの都市を訪れている。
現在のグッドイヤー・ブリンプは、ドイツのライン・ルール地方にあるエッセン/ミュルハイム空港を拠点に飛行。全長75メートル、幅19.5メートル、高さ17.4メートルで、同種の飛行船としては世界最大の大きさを誇る。
ガスの総容積は8,425㎥で、この最新のブリンプでは最大限の安全性を確保するため、すべて不燃性ガスであるヘリウムが使われている。
このモデルは、技術的に言えばツェッペリンNT型半硬式飛行船であり、米国で運航されている3機のグッドイヤー・ブリンプと同じで、200馬力のエンジンを3基搭載し、最高時速125km、飛行距離1,000kmを可能にする。
通常、主要幹線道路や高速道路に沿って飛び立ち、最高高度3,000mに達する。そして、地上にいるクルーからのナビゲーションや通信支援を受けながら飛行する。
2024ル・マン24時間レースに於けるグッドイヤー・ブリンプは、金曜、土曜、日曜の3日間、合計20時間以上を飛行。1回の飛行では14人が搭乗できるため、選ばれたグッドイヤーのVIPゲストやメディア関係者は、地上300メートルの上空から大パノラマでレースを観戦することができる。
そんなル・マン24時間の檜舞台で使用される約7,250本にものぼるグッドイヤーブランドのレーシングタイヤは、ドイツのハナウにあるグッドイヤーの工場で生産され現地に向けて出荷されている。
ル・マンに向けてすべてのタイヤ、フィッティングエリアの設備、そしてレースウィークを通じて100人以になるチームスタッフのケータリングなどを25台以上のトレーラーを使って運搬するのだ。
グッドイヤーでは、トレーラーの最大積載量を最大限に効率化できるよう、これらの荷物の積み方を工夫している。また、チームスタッフ全員が同乗して現地に向かう際にも、効率性を考量したルート選択をしている。もちろん移動債の全車両にはグッドイヤーの低燃費タイヤが使われている。
なお今回のル・マンではなく、日本などへの長距離輸送が必要となるレース会場の場合、グッドイヤーは世界各地へのタイヤ輸送に海上輸送を利用している。
これには通関手続きなど多少複雑になるところもあるが、温室効果ガス排出量の観点からは、1トンの貨物を1マイル輸送するための航空輸送に比べて47分の1に削減できるのが利点という( 航空貨物 対 海上貨物の二酸化炭素排出量/2023年実績<英語> )
さて世界で歴史的意味が深いル・マン24時間レースの現場で、グッドイヤーのタイヤフィッティングエリアは、レースの推移に関しても重要な役割を果たす。
フリー走行や予選で、F1レース2大会分ほどの距離を走る各チームのタイヤを引き取り、決勝に挑むための真新しいタイヤに交換して再び各チームに供給する。そうしてレースの週末に何千本ものタイヤを供給するためには、正確なデータモニタリング、供給管理、そしてチームワークが必要になる。
グッドイヤーのタイヤエンジニアチームには、レース中の路面温度や天気予報などのコンディション情報を筆頭に様々なデータが送られ、それらをリアルタイムで分析する。
分析されたデータは、各チームのグッドイヤー専任エンジニアに伝えられ、レースコンディションに対するタイヤのパフォーマンスを予測し、チームと連携しながらレースの戦略やマシンのセットアップの指針として利用される。
全供給タイヤの1本1本には、RFIDチップが埋め込まれおり、レース期間中のタイヤ使用状態を管理するために使われる。この情報は、レースオフィシャルにも共有され、各チームがレギュレーションを守ってタイヤを使用しているか確認される。
使用済みのレーシングタイヤは、グッドイヤーのモータースポーツ活動に関わるサステナビリティへ活動に則り床材などに活用される。2023年、グッドイヤーは何百本ものリサイクルタイヤから作られた床材を使ったタイヤフィッティングエリアを、毎年公開する。
今年のル・マン24時間レースへの取り組みについて、グッドイヤーヨーロッパ 耐久レース プログラム・マネージャーのマイク・マクレガー氏は、「毎年のことですが、ル・マンへの準備と参戦は1年を通して最大で特別なチャレンジです。
他のレースへの準備から参戦もほぼ同じプロセスですが、ル・マンのスケールは他に類をみません。グッドイヤーが5年前にWECに復帰して以来、ル・マン24時間は最大のモータースポーツイベントなので、チーム全員の意識は非常に高いです。
サーキット内では迫力あるレース展開がされるように舞台裏でサポートし、サーキット外では常に環境への意識を持つ素晴らしい仲間たちと一緒にル・マンに挑めることを誇りに思います」と話している。