NEXT MOBILITY

MENU

2024年4月9日【アフター市場】

デンソーら16者、自動車部品解体プロセスの技術実証を開始

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

デンソーは4月9日、自社を含む参画16法人で、自動車部品解体プロセスの技術実証を開始。この試みが環境省の産官学連携推進事業である「令和5年度自動車リサイクルに於ける再生材利用拡大に向けた産官学連携推進事業」のひとつに採択されたことを明らかにした。

 

この参画法人とは、デンソー、リバー、DIC、UACJ、金城産業、九州メタル産業、住友化学、大同特殊鋼、東レ、豊田合成、トヨタ紡織、野村総合研究所、古河電気工業、マテック、三井化学、早稲田大学の16者。

 

自動車部品解体プロセスの技術実証とは「ELV自動精緻解体を起点とした水平サイクルを実現する動静脈一体プロセスの技術実証」の取り組みを指している。

 

上記の「〝ELV〟自動精緻解体を起点とした〝水平サイクル〟を実現する〝動静脈〟一体プロセスの技術実証」の文言内にある〝ELV〟は、End of Life Vehicleの略で使用済み自動車を指すもの。〝水平サイクル〟は、使用済み製品を同じ製品に利用する資源リサイクルシステムを指している。加えて〝動静脈〟とは経済活動を動物の血液循環に例えた呼称で、資源から加製品を生産するのが動脈産業。使用済み製品の再販・再加工で再流通させる静脈産業を指す。

 

なお同実証に係る取り組みは、既に2024年3月上旬から始動しており、今後、2025年1月末まで実施される予定となっている。

 

近年、自動車産業では、持続可能な社会の実現に向けて「サーキュラーエコノミー」への転換が求められており、再生材の大幅な利用拡大を通じて新たな天然資源の投入量を削減することが必要とされている。

 

しかし、現在世界ではELVを破砕し、材料ごとに選別して再生材を作り出す手法を取っていることが多く、高純度の再生材に向けた材料を選別することが極めて難しく水平サイクル率が低い状況にある。

 

その理由は、これまで動静脈の連携が十分ではなかったことから、高い品質が求められる自動車部品の材料として再生材を用いるための取り組みが進んでいなかった。

 

一方で、ELVの解体・破砕を担う業界では、深刻な労働力不足への対応や、安全・安心で快適な労働環境の整備などが課題に浮上している。というのは再生材の質と量の確保に繫がるELVの新たな処理手法への転換が求められているからだ。

 

そこで今回、先のデンソーを含む16者で、ELV解体・破砕事業者、解体システム提供者、素材メーカー、自動車部品メーカー、研究機関などの参画法人が連携。

 

質と量の確保の両方を実現する新ELVの処理手法「自動精緻解体プロセス」を起点に、動静脈一体となったプロセスの技術実証を行う。そしてこれを通じて、動静脈一体のエコシステムを社会実装する上での課題の抽出を行う。

 

より具体的には、「自動精緻解体プロセスの技術実証」や、「精緻解体で抽出した各種素材の高純度化・再資源化プロセスの技術実証」および、それによって作られた「再生材を用いた部品の試作評価」を行う。

 

また、CO2排出量削減の観点から、自動精緻解体プロセスの環境への負荷低減効果を測定し、処理方法の持続可能性についても検証する。

 

デンソーを含む参画16法人は、「同実証を通じて自動車部品の再生材利用の拡大を目指すと共に、動静脈一体となった自動車産業のサーキュラーエコノミー実現に向けて貢献していきます」と話している。

申請法人・共同実施者および主な役割は以下の通り

 

主な役割:自動車および自動車部品の精緻解体、解体データの取得
企業名/大学名:リバー株式会社( 共同代表 )、金城産業株式会社、九州メタル産業株式会社、株式会社マテック

 

主な役割:自動車部品解体システムの開発
企業名/大学名:株式会社デンソー( 申請法人・共同代表 )

 

主な役割:解体で抽出された素材の高純度化
企業名/大学名:学校法人 早稲田大学 所千晴研究室

 

主な役割:自動車部品用の品質に適合させる再資源化プロセスの開発と再生材の評価
企業名/大学名:DIC株式会社、株式会社UACJ、住友化学株式会社、大同特殊鋼株式会社、東レ株式会社、古河電気工業株式会社、三井化学株式会社 など

 

主な役割:再生材を用いた自動車部品評価
企業名/大学名:豊田合成株式会社、トヨタ紡織株式会社

 

主な役割:プロジェクトマネジメントおよび、CO2排出量削減効果の評価支援
企業名/大学名:株式会社野村総合研究所

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。